さんべ縄文の森ミュージアム(三瓶小豆原埋没林公園)

島根県大田市にある三瓶小豆原埋没林公園

ニュースレター

2016年1月号

埋もれ木の不思議

 

三瓶小豆原埋没林展示室内の流木群

三瓶小豆原埋没林展示室の流木群

 

三瓶小豆原埋没林公園では、「埋もれ木」を使った記念品を販売しています。今回は、埋もれ木の不思議を紹介します。
埋もれ木は、生木の状態で長期間地中に埋もれていた樹木です。製材して利用可能なこともあり、特にスギの埋もれ木には良質なものがあります。そのようなものは「神代杉」と呼ばれて、木工芸品の材料として珍重されます。三瓶山麓は、良質な埋もれ木が出土することが以前から知られており、掘り出して利用されることがあったそうです。
埋もれ木は黒っぽい色調が特徴で、その風合いが時間の流れを感じさせてくれることから、木工芸品として喜ばれます。三瓶小豆原埋没林の発掘では、掘り出した木の色が見ている目の前で変化する不思議な現象が観察されました。出土直後に切断した切り口は、生木と見間違うほど鮮やかな色合いだったものが、ほんの数分の間に変色し、黒く変化したのです。その現場に立ち会った担当者は、浦島太郎になぞらえて、「埋もれ木が玉手箱を開けて、一気に年を取ったように見えた。」と表現しています。
この変化は、樹木に染みこんだ鉄分の作用です。地中の埋もれ木には、地下水に含まれた鉄分が染み込んでいます。小豆原の地下水は特に鉄分が豊富ですが、他県の事例でも同様に鉄分を含んでいることが多いそうです。鉄分は、地中にある時は無色ですが、空気に触れると黒色の酸化鉄に変化します。材が乾燥するとともに内部も黒くなり、独特の風合いを生むのです。
当公園の記念品は、発掘調査時に出土した流木の一部を利用した貴重なものです。お越しの機会には、手にとって、独特の風合いと香りを感じてみて下さい。

 

三瓶小豆原埋没林出土の埋もれ木を使ったキーホルダー。

埋もれ木のキーホルダー

 

~海藻のお話~神馬藻(ジンバソウ)

 

ジンバソウ

海岸に流れ着いたジンバソウ

 

神馬藻(じんばそう)と云う海藻をご存じですか?古代から食用や製塩、肥料や飾りに利用されてきたホンダワラ科の海藻で、現在でも私達の食卓に登場するヒジキの仲間です。
島根は海藻と縁が深く、出雲・石見・隠岐は平安時代から海苔を貢献する産地として延喜式に記載されており、その他の海藻も収穫されていました。また、現在でも県内各地で神社に神馬藻を持ってお参りに行く風習が残っています。
大田市ではジンボサやササボバ・ボバと呼ばれ神事や食用に利用されています。市内の五十猛町大浦地区で行われる小正月の行事(五十猛のグロ:重要無形民俗文化財)では、グロと呼ばれる円錐形の大きな仮屋を清める際に、神馬藻で海水を撒いて歳神様を迎えます。古代から海藻にはお浄めの効果があるとされています。
食用としては、6月頃に収穫し、干したものを水で戻し油炒めにしたり、白和えにして食べます。島根には美味しい海藻がたくさんあります。今回ご紹介した神馬藻も、機会があれば是非ご賞味下さい!

 

佐比売山神社の「叶え杭」

 

佐比売山神社の叶え杭

 

佐比売山神社の叶え杭

 

埋没林公園の南約600mにある佐比売山神社には、「叶え杭」という石柱があります。
叶え杭は三瓶山に見立てた3本の石柱からなります。出雲國風土記の冒頭にある国引き神話で、国造りの神「八束水臣津野命」が国を引き寄せ、綱を佐比売山(三瓶山)を杭にしてつなぎ止めたという物語にちなみ、福をつなぎ止める杭として、平成23年6月に設置されました。
杭にはたくさんの木札がかけられています。国引き神話の舞台を巡って三瓶山まで足を運んでもらうことを期待して、出雲市西園町の長浜神社で「国引き縁結び手形」を入手し、叶え杭に結わえて「福をつなぐ」という趣旨です。            長浜神社は、国を引いた綱とされる「園の長浜」にあり、八束水臣津野命を祀る、国引き神話の中心とも言える神社です。神話の物語をきっかけに、出雲と三瓶山をつなぐ人の「縁」が深まることを期待したいものです。