さんべ縄文の森ミュージアム(三瓶小豆原埋没林公園)

島根県大田市にある三瓶小豆原埋没林公園

ニュースレター

2010年12月号

大田の あがなもん こがなもん「四季折々の魅力 三瓶山西の原」

西の原と三瓶山の画像

~春~

毎年、3月後半に行われる野焼きが三瓶山に春を告げます。
枯れ草に火を放つと瞬く間に炎が広がり、焼け野原に変わります。
黒い地面が緑に変わるまではほんの数週間。若葉が芽生え柔らかな緑の原になります。

~夏~

草いきれがたちこめる季節。
牧柵の向こうでは黒毛の牛が悠々と草をはむ姿があります。
放牧は江戸時代初期から伝わる三瓶山の伝統。
短く刈り込まれた草原の道はクロスカントリーコース。
毎年8月に大会が開催されるほか、合宿で三瓶山に訪れた学生にとって格好の練習場所になっています。

~秋~

里より一足早く秋が訪れると、西の原は一面のススキの原に姿を変えます。
足を踏み入れると虫の合唱が聞こえ、可憐なリンドウの花に出会うことも。
草原の途中で振り向くと、ススキの海の向こうに広がる日本海の青が目に飛び込んできます。
心癒される風景に、カメラを手にした姿が目立ちます。

~冬~

北風に灰色の雲が運ばれて来るようになると、雪が舞い始めます。
吹雪が吹き荒れると、辺りは銀世界に一変。雲間から日ざしがさし込むと、雪原は光の舞台。息を飲む光景です。
真っ白い雪に覆われた西の原の、広々とした緩やかな斜面は小さな子供連れでのそり遊びなどに最適です。

 

太古の森のこぼれ話「活火山」

小豆原埋没林は三瓶山の噴火で埋もれました。三瓶山は火山なのです。
三瓶山の最後の噴火は、埋没林を埋めた約4000年前。その後は噴火した確実な痕跡や記録はみあたりません。
今のところ、活動再開につながるような兆候はみあたらず、お休みしている状態です。

では、三瓶山はもう噴火しないのでしょうか。
過去の活動履歴では、10万年前の活動開始から現在までに7回の活動を行いました。
活動間隔の長短はありますが、平均1.4万年に1回ということになります。この間隔からみれば、4000年のお休みはまだまだ「ほんのひと休み」といったところ。
活動をやめたと判断するには早すぎます。
10万才という年齢も、大山が約100万年活動を続けたことを考えればまだまだ若手といえるでしょう。
すなわち、三瓶山は噴火を再開しても不思議ではないのです。

気象庁は将来活動する可能性が高い火山を「活火山」に指定し、必要に応じて観測を行うことにしています。
その基準のひとつが、「過去1万年間に活動した火山」。三瓶山はこの基準に当てはまり、活火山に指定されています。
活火山にも、現在噴火している火山から三瓶山のように長らく休んでいる火山までいろいろあり、活動度が高い方から順にA、B、Cにランク分けされています。
三瓶山は緊急度が低いCランクです。

なお、「死火山」、「休火山」という言葉は、一般的には馴染みがありますが、分類の定義では使われません。
したがって、三瓶山は死火山か休火山か、という問いに答えはなく、「三瓶山は現在活動を休止している火山で、活火山指定を受けています。」という説明になります。

 

ヤマメ、とれたよ!縄文の森の秋まつり 10月10日開催

ヤマメつかみ取りの画像

10月10日(日)に「縄文の森の秋祭り」を開催。
このイベントは、縄文人になった気分で実りの秋を楽しもうという企画。
たき火でご飯を炊いたり、川でヤマメをつかみ取りして焼いて食べるなどの体験を30名以上の親子が楽しみました。
また、芝生園地では小豆原自治会のみなさんによる地元物産販売も開催。とれたての野菜が大人気でした。

イベントで大いに盛り上がったのはヤマメのつかみ取り。
 「あっちに逃げた~!」 
 「こっちに来た~!」
 「三瓶のヤマメは元気がいいの~!!」

ヤマメつかみ取りの画像

はじめは恐る恐る川に入った子どもも夢中になって逃げまどうヤマメを追いかけましたが、あまりのすばしっこさに悪戦苦闘。
そんな子ども達をはじめは岸から眺めていた家族のみなさん、やがて、じれったくなったのか次々と川に入り始めました。
子どもを手伝うはずが気づけば自分が夢中に。幼い頃に戻ったような気分だったのではないでしょうか。
ついには親子ともビショ濡れになってヤマメを追いかけました。

そんな苦労の末、ついに「捕ったど~!」、「おっしゃ!!」と歓声と拍手が響くようになりました。
捕まえたヤマメをつかんでたき火のもとへ向かう子どもたちの得意げな姿。
普段の生活にはない達成感だったのではないでしょうか。苦労して獲物を手に入れた縄文人の気持ちに少し近づけたかな?

みんながつかみ取りに夢中になっている間、ご飯を炊くたき火の番をしてくれたのは、小豆原地区のみなさん。
20年ほど前まではかまどでご飯を炊いていたというだけあって、見事な炊きあがり。
はじめは、自分たちで調理することに不安そうだった参加者のみなさんから笑顔がはじけました。焼いたヤマメ、イノシシ肉とともに、「いただきます!」。
また来たい、という声もいただき、 無事に終了しました。

大田のうまいもん「箱寿司」

箱寿司画像

箱寿司は、お祭りや来客の際の大田の定番料理です。
これは押し寿司の一種。
ごぼう、干ししいたけ、かんぴょう季節の野菜などの具を細かくきざんでだし汁、砂糖、醤油などで味をつけます。
これをすし飯でサンドして専用の木枠に詰め、軽く重しをしてなじませます。そして、錦糸玉子を飾り、切り分けていただきます。
小分けにした箱寿司はケーキのようにも見え、小さな子供達も大好きです。

木枠には大小あり、大きなものは一度に何十人分も作ることができます。
箱寿司の歴史は石見銀山とつながりがあります。幕府直轄領だった石見銀山には、江戸から代官らの役人が派遣されました。
彼らや奥方が江戸の味や風習を懐かしんで作ったものが箱寿司の始まりとされています。
大田市内数店舗でメニューにあるほか、スーパーでも手軽に購入できます。

2010年10月号

大田の あがなもん こがなもん「爽快!! 三瓶観光リフトで登山気分」

三瓶山観光リフト(左)と女三瓶山頂から見る島根半島方面(右)

三瓶山東の原から太平山へ登る観光リフトは、遠くに大山や中国山地の山並みを望む抜群の展望を楽しむことができ、登山にも便利。

秋は足下にマツムシソウが咲き、晩秋には展望所から三瓶山随一の紅葉を楽しむことができます。

今回はスタッフの女三瓶登山体験記を紹介。

まずはリフトにゆっくり揺られること約10分で標高834mの終点に到着。そこから歩いて女三瓶山を目指します。

案内表示もあり、初めての方でも迷うことはないでしょう。山道は途中まで石段が整備されており、約15分登ると視界が開けた場所に到着します。

そこで待っていたのは、正面には雄大な男三瓶の姿、左手には子三瓶、孫三瓶その下を見ると室ノ内の池。そこからもう少し(約2分)進むと、標高957mの女三瓶の展望デッキに到着します。

頂上では、心地よい風が吹きススキを揺らしています。そこから見下ろす風景は、時間がゆっくり流れるのどかな里山。遠くに目をやると日本海。眺めのよさと、心地よい風のおかげで、登山での疲れが飛んで行ってしまいます。

その気持ちよさも手伝ってか、ここから約60分で男三瓶と案内表示されていると、何だか男三瓶の頂上を目指したくなってしまいます。

しかし、今回は軽装備のため断念し「また来るね」と男三瓶に約束して下山をしました。

リフトを使った楽々登山ルートは、登山経験がなく、体力に自信がない方にもお楽しみいただけます。また、リフトを使ってそこから全峰縦走というコース設定では、本格的な登山を少し楽に体験できます。皆さん、一度体験をされてみてはいかかでしょうか。

 ●ルート:東の原 ー リフト ー 女三瓶山頂

 ●所要時間:片道約30分

 ●リフト料金:650円(往復券)

 ●紅葉時期:10月下旬~11月上旬

太古の森のこぼれ話「年輪の秘密」

年輪は木の成長の歴史が刻まれています。

1年に一本ずつ増えていくので、数えることで木の年齢を知ることができます。今回は年輪について紹介しましょう。

年輪は色が明るい部分と黒っぽい部分が一組になっています。明るい部分は春から夏にかけて形成された部分です。

ひとつひとつの細胞が大きく、その分すきまがたくさんあります。黒っぽい部分は夏から秋にかけて形成されます。

細胞が小さくなり、組織が密につまっています。すきまの大小が色の違いに反映されているのです。

寒くなると木は成長を止め、黒っぽい部分ができた状態で冬を越します。

ちなみに、小豆原埋没林の立木は黒っぽいが完成した状態なので、秋から翌年の春先までの間に埋もれたことがわかります。

幹は樹皮の下で細胞が分裂して成長します。すなわち、年輪は外側へ外側へと増えていくのです。同時に、樹皮も形成されます。樹皮は幹とは逆に、内から外へ押し出されるように成長します。樹皮の表面が少しずつはがれ落ちても、内側から新しく生まれて来るのです。

幹の断面をみると、外側が白っぽく、中心近くはやや濃い色をしています。

白っぽい部分は「シラタ」と呼ばれ、材が柔らかいので建材などには使えない部分です。

このシラタは幹の新しい部分で、木が生きる上でとても大切です。水や養分を吸い上げるのは、シラタ部分にある導管と呼ばれる管です。

木の成長とともにシラタも更新され、内側の部分の導管は使われなくなります。使われなくなると樹脂によって埋まり、その分材が硬くなります。

古い木では木の中心が空洞になっていることがありますが、もともと中心部は木が生きるための機能を失った部分なので、そこが朽ちてしまっても生きていけるのです。

逆に、幹の周りをはがし取ってしまうと木は枯れてしまいます。

年輪に関連してしばしば耳にするのが「幅が広い方が南」。

これは本当でしょうか。答えは「間違い」。日当たりが良い側への枝張りが多くなることはありますが、幹の成長と日当たりは基本的に関係ありません。

しかも、深い森の中では南が日当たりが良いとは限りません。

山中で迷ったときに切り株の年輪で方角を決めて進んだら、余計に迷ってしまいますよ。

大田のおいしいおみやげ「ストまき」

ストまき画像

大田特産品のひとつが「かまぼこ」です。

かまぼこといえば板に乗った形が主流ですが、大田で「かまぼこ」といえば、ストローにまかれた「ストカマ」です。

旅行で訪れた方がこの形を初めて見てびっくりされることがしばしばあります。

子供の頃から見慣れてこれが当たり前と思っていたので、驚かれることにびっくりしてしまいますが、全国的には珍しいスタイルのようです。

ストかまの原料は地元の港で水揚げされた魚。大田沖は底引きの良い漁場で、そこで採れた新鮮な魚を使います。

素材の良さは、一口食べたら納得! 魚の風味がしっかり活きているのです。

おすすめの食べ方はシンプルが一番。1cmくらいの厚さに切り、わさびと醤油をつけて食べると風味と食感を楽しむことができます。

三瓶産のわさびをおろして添えれたら最高!

また、焼いても、油で揚げても美味しくいただけまし、包丁で切らずに手でちぎって食べると独特の食感が味わえます。

大田では、ストかまは普段の食事にも、お祭りなどのご馳走にも、欠かせない一品です。市内のスーパーやお土産店などで購入でき、おみやげ用には日持ちがする真空パックもあります。

(真空パックはストローがまいてありません。)

2010年8月号

大田の あがなもん こがなもん「松代鉱山の霰石」

アラレ石

大田市の国指定天然記念物は、これまでに掲載してきた「三瓶自然林」「波根西の桂化木」と当公園「三瓶小豆原埋没林」に加え「松代鉱山の霰石産地」があります。

松代鉱山産の霰石は、断面が菊の花のように見える六角柱状の結晶が寄り集まった団塊として産出し、塊は直径5~10cmのものが多く、直径30cmを超える大型のものも産出しました。

アラレ石は鉱物として珍しいものではなく、貝殻もこの鉱物の微細な結晶の集合体です。

ところが、松代鉱山のように塊状で産するものは世界的にも珍しいことから、産出地が国の天然記念物に指定されています。

松代鉱山は明治34年に石こう鉱山として採掘が始まった鉱山で、昭和40年代まで稼働していました。

霰石は石こう鉱床の上下に分布する粘土化した火砕岩中から掘り出されましたが、利用価値がない「邪魔者」で、鉱山稼働時は排土として処理されていたそうです。

現在、霰石を産した坑道を見ることはできず、現地に案内板などもない状態です。その希少性から鉱物コレクターの間では世界的に知られる存在で、国立科学博物館など大きな博物館には必ず標本が収蔵されているほどです。大田市の天然記念物では、三瓶小豆原埋没林に勝るとも劣らない貴重な存在といえるでしょう。

太古の森のこぼれ話「年輪を数える」

埋没樹の断面

埋没林公園の展示棟のほぼ中央にそびえるスギの巨木。

「切り口で年輪を636本数えることができます。」と紹介すると、思いがけない質問が飛び出しました。

「あの高い場所でどうやって数えたの?」

そう、切り口の高さは床面から約8m。そこで年輪を数える姿を想像すると、足がすくみそうです。

正確には、年輪を数えたのはこの切り口ではなく、この部分を切って作った輪切りを数えたのです。

発掘時に年輪などの調査を行う目的で、輪切りを作成しておいたという次第。

このスギは1983年の工事中に出土した際に、上部を切り取られていたので、その切り残し部分から輪切りを作ったのです。

輪切りは奈良文化財研究所に送られ、年輪一本一本の幅を測定しながら計測されました。幅のデータは、「年輪年代法」に用いる基礎データになります。

この木の年輪は、約4600年前から約4000年前までの約600年分の年輪データとなります。

この木の他にも、数本の年輪が計測され、データ化されています。

年輪データがまだ得られていない時代があるので、現時点では年輪年代法でこの木が生きていた年を知ることはできませんが、いずれデータがつながれば、様々な年代を知る手がかりが得られることになります。例えば、縄文時代に使われた丸木船が今から何年前に切られた木で作られたものかをはっきり特定できる可能性があります。埋没林の年輪から、太古の歴史を解き明かす大発見があるかも知れませんね。

波根海岸の海上ツアー始まる

海上ツアー

大田市波根海岸で海上ツアーが始まりました。

波根旅館組合が企画したこのツアーは、伝馬船からみる絶壁と洞窟の眺めに加えて、港での漁師料理が魅力です。

波根海岸は絶壁の風景が特徴です。濃淡が明瞭な地層がくっきりと見える絶壁の岬の先には、立神島という島があり、その岩肌は国道9号線からみることができます。

ツアーは波根漁港から出発。港を出るとすぐに立神島が迫ります。

島を回り込みながら断崖に近づくと、陸からの印象よりもはるかに高い絶壁に圧倒されるに違いありません。

海上ツアー

岬の外海側には洞窟がいくつも並びます。コウモリ穴と呼ばれる洞窟にはその名のとおり多数のコウモリが生息しています。

気象条件が良ければ船で中に入ることができ、飛び交うコウモリを目撃できるかも知れません。

洞窟のうちのひとつは、一番奥まで入った人がいないというほど深く、地元では「三瓶山につながっている」といわれているのだとか。

また、くぐり抜けができる洞窟もあり、海と岩がおりなす景観を存分に楽しむことができます。

港へ帰ると漁師料理が待っています。とれたての魚をその場でさばいて作る料理の味は最高の贅沢。

何の気取りもなく、漁港にござを敷いて味わうのもこのツアーの魅力です。

波根旅館街では、魚を使ったすき焼き風郷土料理「へかやき」や夏の夜は浜焼き(浜辺で海産物をバーベキュー)もあります。

また、海水浴を兼ねた宿泊にも最適。

海あり、山ありが大田市の特徴。波根旅館に泊まって海を満喫したあと、三瓶山や石見銀山へ足をのばす楽しみ方もありですね。

【海上ツアーについて】

9月中旬まで催行予定。

大人3000円、こども1000円。

申込みは波根旅館組合090-6834-480(3日前までに予約を)。

大田の美味しいお店「西の原レストハウス」

レストハウス

男三瓶、子三瓶をしたがえて、ゆったりとスロープを描く西の原草原。

三瓶山を代表する景色を正面に望む最高の場所に立地するレストランが「西の原レストハウス」です。

店内からも西の原の景観を望むことができる作りになっています。

高原のレストランというロケーションに対し、店内のレイアウトやメニューは「町の食堂」的な気楽な雰囲気で、そばセットやカツ丼が人気。

ご家族や団体での旅行には、地元産の旬の食材を使った定食がおすすめ。地元産の旬の食材を使い、値段も1000円から希望に応じて対応可能。ただし、5日前までの予約が必要です。

【営業時間】

平日  10:30~16:00

土、日 10:00~16:30

定休日     水曜日(7月22日~8月31日は無休)

収容人数   テーブル席56名 座敷30名

駐車場     西の原駐車場利用可(店内へはスロープあり)

住 所     大田市三瓶町池田3294

TEL     0854-83-2053  

2010年6月号

大田の あがなもん こがなもん「清滝」

清滝

清滝は、大田市久手地区を流れる江谷川の上流にあり、岩肌を幾条もの細い糸のように水が流れる美しい滝です。

江谷川の上流にあり、水の神様である市杵姫命(いちぎひめのみこと)を祀っています。

滝への道の目印は国道9号線沿いの「道の駅ロード銀山」。

その西の交差点から市道に入り、南へ約6km進むと滝見学用の駐車場があります。
駐車場から滝までは徒歩5分ほど。遊歩道を行くと、まず「矢滝」「小滝」があらわれます。
名前は「小滝」ですが、横の広がりと水の音は充分に満足できます。

心地よい水の音を聞きながら進んでいくと、落差20mの清滝にたどり着くのですが、滝と遊歩道の絶妙な角度のため、ぎりぎりまでその姿が見えません。
滝から落ちる水の音が段々大きくなり、期待が膨らんだところで最後の一歩。突然目の前にレースのカーテンのような滝の姿が現れます。
何度訪れてもわくわくする瞬間です。

太古の森のこぼれ話「根株の上には!?」

A-9

埋没林がまだ発見されていなかった1995年頃のことです。

三瓶火山の研究家である松井整司さんは、以前に行われたほ場整備の際に出現した巨大な立木を探すための調査を行っていました。

ある時、誘われて調査に同行しました。

立木を探すと言っても、何しろ地面の下のこと。うろうろ歩き回ったところで、立木の手がかりはどこにもありません。足下に木が立っていることを想像することも困難です。ところが、川の中に手がかりがあったのです。

「この川の底に、大きな木の株が顔を出しているんだ。」

松井さんに案内され、草が茂る小豆原川へ足を踏み入れました。

「ここだ、ここだ」

松井さんが指さした先に、確かに木の一部が顔をのぞかせています。半円しか見えていませんでしたが、かなり大きい木のようです。年輪がきれいに見えていて、触ると材がしっかりしています。しかも、2つあった株の一方には、護岸の石垣が乗っています。その様子を見ると、何千年も昔のものとはちょっと思えませんでした。

「先生、これはそんなに古いものではないのでは??」

「だがな、今の地盤からはずいぶん低いぞ。こんな所に木が生えていたのが最近のこととも考えにくいぞ。」

今。

あの時石垣が乗っていた根株は、三瓶自然館に展示されています。新しい時代のものという見立ては大外れで、それは四千年前の森の一部だったのです。

ところで、気になることがひとつ。それは、株の上に石垣を積んだ人はその木のことをどう思っていたのでしょうか。石垣を載せたということは、それが少々のことではびくともしないと知っていたのでしょう。でも、それが太古の森の一部だとは思いもよらなかったにちがいありません。

大田の美味しいお店「御前そば」

御前そば

「御前そば」は、石見銀山の町、大森の伝統的建造物群保存地区の一角にあります。

オススメのメニューは「鴨つけ麺」(900円)と「割子そば定食」(850円)です。人気メニューの「鴨つけ麺」は、あったかい鴨汁にそばをつけて食べる独特のスタイル。

先代から伝わる出汁の味を50年以上守り続けているそうです。つけ出汁でありながら、濃すぎない「飲める出汁」で、コクと風味がたまらない一品です。

他にも沢山のメニューがありますので、銀山の町並み散策の機会に是非お立ち寄りください。

営業時間 11:00~16:30

定休日 不定休

収容人数 40名

駐車場 なし

住 所 大田市大森町イー793-1

TEL 0854-89-0332

団体受付 要予約

時空を超えて大蛇現る!

フェスティバル

5月2日に開催した埋没林フェスティバルでは、恒例の地元多根神楽団による幻想的な神楽上演を行いました。

演目は「大蛇」。スサノオノミコトが大蛇を退治する神話の一場面です。

舞台は時空を超えて現れた縄文の森。奏楽の音が響くと太古の空間にタイムスリップしたような感覚に包まれます。
荒れ狂う大蛇の姿に一段と激しくなる神楽囃子。勇壮な舞と迫力ある音の世界は、他では味わうことのできない神秘的な空間を満足して頂いたものと思います。

また、芝生園地では野点と地元の物産販売を開催し、楽しいひとときを過ごしていただきました。

【多根神楽団】

多根神楽は、三瓶山北麓の神楽社中。

明治の中頃に多根佐比売山神社の宮司が神職の舞を村人に伝授したのが始まり。昭和16年頃に舞人の減少により一旦途絶えたものの、昭和41年に青年団員数名の有志が発起し復活した。
現在、伝統ある郷土芸能多根神楽を後世に伝えたいと、20名余の団員が活動している。

2010年4月号

大田の あがなもん こがなもん「掛戸松島」

掛戸松島

 JR山陰本線。大田市駅からのぼり列車で東へ向かうと、久手駅を過ぎてまもなく左手に切り通しが現れます。
その先に見えるのが「掛戸松島」。高さ20m近い搭状の岩の上には松が立っています。
地元で育ったものにはとても親しみがある風景で、遠方へ出かけた帰りなど、ここを通るとほっとしたものです。
以前は車窓から間近に見えたのですが、現在は暴風壁に視界が遮られるのが少し残念です。
でも、自動車ではすぐ近くまで行くことができます。ここからの夕暮れの景観は格別で、黄昏ゆく空の色をゆっくりと眺めていたい場所です。

 てっぺんに立つ松は数代目で、当代は平成18年に地元の方が植栽されたものです。この松も元気がありませんが、脇から自生した別の木が次代を担う勢いで元気に育っています。

 掛戸はその南にあった波根湖の水を日本海に排出する為に開削された切り通しです。伝承によると、鎌倉時代に地元の有力者有馬氏が2代をかけて完成させたと伝わります。

太古の森のこぼれ話「現代のスギ林を見に行く」

若杉天然杉

 益田市美都町板井川に島根県の本土側では貴重な自生のスギ林があります。
「若杉天然杉」と呼ばれるこの林は、標高691mの正本山の中腹から上にあり、スギとモミの大木が混交しています。

 板井川の上流、双川峡を過ぎてさらに進むと登山口に到着。ここからは急な山道を歩きます。登ること約30分。
ようやくスギ林に到着。出迎えてくれたのは幹が幾本にも分かれた異形のスギ。大人5人でやっと抱えられるほどの太さ。傍らにも巨木を従え、堂々たる風格です。

 ここには、周囲2m以上のスギが30数本とモミ、広葉樹の大木が林立しています。数百年の時をかけて育った巨木の姿に出会うと4000年前の小豆原の森はこのようであったかと、太古の森に少しだけ近づけた気がします。

 現代では山奥にわずかだけ残る巨木の森。かつて縄文の時代にはこのような豊かな森があたりまえのように存在していたのでしょうか。若杉天然杉を訪れると、縄文の自然の豊かさにあらためて感動をおぼえます。

大田の美味しいお店「ロード銀山」

ロード銀山

 こだわりの郷土料理が評価されて県の「しまね故郷料理店」に認定された、ここ「ロード銀山」は、食材も地元のものを活かした料理にこだわり、伝統の故郷の味を提供されています。

 一押しメニューは”ここだけ定食”で、三瓶で育ったそばの実を丁寧に石臼製粉したそば粉を使用した手打ちそばと「箱寿司」をセットにしたものです。他にも「そば・さば寿司定食」「そば・あなご寿司定食」などたくさん揃っています。
箱寿司の美味しさは、酢の加減や酢飯のしまり具合で微妙に変わるようですが、ここの箱寿司は母親の味を思い出させるような優しく誰にでも好まれる味になっていると思います。
また、好き嫌いの多いあなごもしっかりと下地処理がされており、臭みがなく美味しく食すことができ「あなご寿司定食」は”超お勧め”とのことでした。

 ロード銀山の建物は、お年寄りや車椅子のお客様に配慮した設計になっていますので安心してご利用下さい。

営業時間

○売   店 AM 9:00 ~ PM 7:00

○レストラン AM11:00 ~ PM 5:00(宴会等のご予約は要相談)

定休日 毎週水曜日

収容人数 約80名

駐車場 乗用車50台、バス3台

住所 〒694-0052 島根県大田市久手町刺鹿1945-1

TEL 0854-82-1991 FAX 0854-82-8684

*4月下旬より道の駅「ロード銀山」として開業予定

*道の駅に改修後は乗用車80台、バス5台駐車可

2010年2月号

旅の新提案~平田進也と行く快goツアー

平田ツアー

 1月17日、あるツアーご一行が埋没林公園へお越しくださいました。要介護の方を対象としたその名も「快go(かいご)ツアー」で、大田市の介護士・中村学さんが同行されました。そして、添乗は“カリスマ添乗員”として知られる平田進也さん、スペシャルゲストとして“ミヤネ屋”の宮根誠司さんが登場する特別感いっぱいの旅。

 今回の旅が実現したのは、大田市出身の宮根さんからつながった縁がきっかけとなり、さまざまな人の思いが集まったおかげ。埋没林については、平田さんが観光素材として高く評価してくださっており、ツアーに組み入れられました。 この旅の様子は日本テレビ系のテレビ番組「秒ヨミ!」で放送されます。

太古の森のこぼれ話「森は広いのだ」

大田の立木

 川の水面から突き出る黒いもの。大田市内を流れる三瓶川、静間川の川岸を歩くと、アヤシイ物体が立っているのを見かけることがあります。なんだ?

 これは小豆原埋没林と同じ4000年前頃に、三瓶山から流れ下った土砂に埋もれた立木。幾本も確認でき、大きなものは1mを超える太さを有するものがあります。どうやら、大田の平野部には太古の森が埋もれていて、川が地面を削り込むとその一部が顔をだすようです。

 同じような立木は出雲平野の神戸川岸にもあります。斐伊川放水路として掘削された部分には10本以上の木が立った状態で埋もれており、他の地点でも何本かが確認されているのです。それらが埋もれたのはやはり小豆原と同じ頃。三瓶の火山活動で噴出された土砂は、神戸川にも多量に流され、下流にあった森を埋めたようです。4000年前の森が広い範囲で残されている。これはスゴイ!

 きっと、平野の地下にはまだまだたくさんの木が眠っているのです。三瓶山の山麓から海岸までの当時の森林を再現できる可能性を秘めています。やるなあ、三瓶山。

 ちなみに、平野部で確認される立木の多くは広葉樹で、スギが中心の小豆原とは森の様子が違うことがわかっています。
  

大田のあがなもん こがなもん

石見地方に伝わる 「地元漁師の伝統料理」に『へかやき』というものがあります。「へか」とは農機具の犂(すき)の先の金属部分のことで、これを鍋の代わりに使ったことから『へかやき』と呼ばれるようになったようです。

 へか焼きのメインは肉ではなく、地元で獲れた新鮮な魚です。アマダイ、アナゴ、カレイなど旬の魚と野菜を併せて煮立てて食べます。魚から取れる出汁で野菜も美味しく、ヘルシーな料理です。日本海に面した、大田市波根町の各旅館で食べることができます(要予約)

金子旅館 0854-85-7130

水明館 0854-85-7358

石原旅館 0854-85-8529

武田旅館 0854-85-8635

朝日旅館 0854-85-8431

三瓶の美味しいお店「Voice Cafe 岳人」

岳人

志学温泉の中ほどに、地元のこだわりの食材を活かした山の洋食屋さん「VoiceCafe岳人」があります。オーナーの奥村和也さんは、元ミュージシャンで店内のステージには本格的な機材が設置され、ギターの演奏、カラオケ等が楽しめるスペースが確保されています。奥村さんの滑らかな指使いから奏でられる音色は柔らかく、転がるように弾き出される旋律は誰もが心地よく感じることと思います。

 食事の内容も豊富で、人気メニューは何と言っても「日替ランチ600円」で、お薦めメニューは、山陰情報誌”さんいんキラリ”(’09秋冬号)でも紹介されたオムライス!!
このオムライス、なんと明治オムライス~平成オムライスとシリーズ化されています。

 こだわりの食材のひとつは、まず白米!これは三瓶の豊かな自然の水と有機栽培により作られた「三瓶米こしひかり」を使用しています。また、三瓶ではこのお店のみで取り扱っている「かわむら牧場の島根黒毛和牛」を使用したステーキ、焼肉、カレーが自慢のメニューとのこと。 店構えは一見すると和風の趣がありますが、店内に入ると外観とは異なり広々としたカフェで自分の好みにあった席を選べるようレイアウトが工夫されています。

昼の営業時間 11:00~23:00

定休日 毎週水曜日

収容人数 約40名

駐車場 店舗前4台
(事前連絡により近隣の駐車場を確保できます)

住所 島根県大田市三瓶町志学ロ932-2  

TEL 0854-83-3678

豊かな大田市で生まれて20年~成人を迎えて~


私は今年成人式を迎えました。無事に成人できた事に感謝でいっぱい、幸せに思います。

 正直なところ “成人”と言ってもまだ実感がありません。「大人の仲間入りなんてしたくないな…、いつまでも子供のままでいたいなぁ」。そんな甘い気持ちもある今日この頃ですが、いつまでもこんなことではいけない。責任ある行動をしなきゃ!。

「絶対、都会に出たいよね~」

 以前は友達とそう話していました。でも、私は大田を出ませんでした。あんなに都会に行きたかったのにどうしてだろう。自分でも少し不思議な気がします。生まれ育った町が恋しくて離れられなかったのでしょうか。

 高校を卒業した私は埋没林公園で働く事になりました。母の実家が近いこともあり、幼い頃から三瓶にはよく遊びに行っていたので、大体の見所は行ったことがあるつもりでしたが、埋没林公園は行ったことがありませんでした。そういうものがあることは知っていましたが、まさか自分がそこで働くことになるとは夢にも思ってもなかったのです。

 いざ働くことになり、初めて「埋没林」を見た時の印象は、
「おっきい木だなぁ、縄文時代の杉なんだぁ」という程度で、それ以上の関心はありませんでした。ところが、勤めているうちに埋もれた理由や発見の経緯などを知り、少し興味を持つようになりました。自分なりの疑問も生まれ、それが理解できた時、「自然って凄いなあ!」、「こんなこともあるんだなあ」と驚きを感じるようになりました。それは埋没林に勤めていなかったら知ることがなかった驚きや感動だったかもしれません。

 今私はこう思っています。自然は凄い力を持ち、不思議に包まれたとてもロマンチックな世界。大田にある「自然」は、都会の街にも負けないぐらい素敵。

 埋没林公園で働く事になったのは、「埋没林を見て何かに気づきなさい」という運命(?)だったのかも知れませんね。