月イチガク⑥「気候が変? どう? ~気候変動の過去未来~」
9月14日の月イチガクは、「気候が変? どう? ~気候変動の過去未来~」と題して地球温暖化問題をはじめ気候に関する話題をエコサポしまね(公益財団法人しまね自然と環境財団環境事業課)の葭矢崇司さんにお話を伺いました。アメダスの記録によると当日の大田市は最高気温が35.1℃の猛暑日で、気候問題を実感する暑さとなりました。
今年は7月の気温が記録上最も暑かったとされ、8月、そして9月になっても当たり前のように35℃を超える暑さが続いています。平均気温の推移をみると、過去数十年間にわたって上昇傾向が続いており、産業革命前の1850年から1900年の平均値に対して1℃以上、場所や期間を限定すると1.5℃以上も上昇したとされます。その要因には太陽活動など自然現象も考えられるものの、それらが原因と考えられる範囲を超えた上昇を示しており、その分は人為的要因とされます。
人為による気温上昇では二酸化炭素(CO2)の排出が大きく寄与していると言われます。二酸化炭素は温室効果ガスと呼ばれる気体のひとつで、太陽光によって温められた地球からの放熱を防ぐ作用があります。水蒸気による温室効果も大変大きく、もしもこれらのガスがなかったら地球の平均気温は-18~-19℃の「氷の星」になると試算されています。つまり、「温室効果ガス=悪者」という構図ではなく、私たちの暮らしは温室効果によって成り立っているのですが、そのバランスが少し乱れて急激な気候変化を招くと社会生活に悪影響を及ぼすことになります。
悪影響として考えられることはいくつかあり、夏の暑さが熱中症の多発を招くなど人体に直接影響するものや、農作物の好適環境が失われて食料供給に支障を来すことも考えられます。予測される気温上昇のうち最も高く推移した場合、島根県の平野部では米の収量が減少するという資料も紹介されました。
また、気温上昇が気象現象に変化を及ぼすことが予想され、一度の降雨量が増えて水害を招く、地域によっては降水量が極端に減って干ばつを招くということが考えられています。年ごとの気象現象が中長期的な気候変動に起因するとは必ずしも言えないものの、今夏の日本列島は雨が降らない長い暑さと集中的な大雨のパターンで、極端な天候になっていると感じます。
日本列島周辺の海水温も高くなっており、黒潮の蛇行が変化して東北地方の沿岸に達する形になっていることも今夏の暑さの原因です。台風10号が勢力を増しながら日本の南岸をゆっくり移動した後に上陸したことも、海水温の高さが原因と指摘されています。このような現象も地球温暖化の一部なのかも知れません。
将来の気候がどうなるのか、それに対して何ができるのかを考える上では、過去の現象を知ることも必要と考えられています。古気候解析の取り組みは1980年代後半から盛んに行われ、気象観測が行われていない時代についても日記などの文字記録に残されている気象に関する情報から気温を推定する方法や、科学的な手法によって解明が進められています。科学的な手法として、酸素の同位体を用いて樹木の年輪に残された記録を読み取ることが進められていて、三瓶小豆原埋没林の埋没木は4000年前から4500年前頃の年ごとの気象を知る手がかりとして期待されています。
気候変化の問題は単に暑い寒いではなく、社会の変化をもたらすことが懸念され、時には国家間のバランスにまで影響することが考えられます。気候変化に対して何ができるのか、何をすべきか。50年、100年先を見据えて取り組む課題です。
カテゴリー | 教室 |
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日時 | – |
会場 | さんべ縄文の森ミュージアム |
定員 | 20名(webでの参加は自由です) |
料金 | 入館料 |
備考 | ※年間パスポートで月イチガクに参加できます 現地参加は要予約。 |