【特別連載5】地域イベントでチャレンジ!「カーボンオフセット」のはじめ方
地域イベントでチャレンジ!
「カーボンオフセット」のはじめ方
「次のイベント、これまでと少し違うコトができないかな?」
地域でイベントを企画・運営していると、「来てくれるだけでありがたい」という気持ちと同時に、「次は何をプラスできるだろう」と思いが浮かぶことがありますよね。
最近では、環境への配慮もその選択肢のひとつとして意識されるようになってきました。
そこで、ご紹介したいのが「カーボンオフセット」!

とはいえ、「カーボンオフセット」と聞くと「そもそも、なに?専門的で難しそう…」、「手続きが大変そう!」などと感じる方も少なくないハズ。
そこで今回は謎多き「カーボンオフセット」を地域イベントの現場で実際に取り入れられる形に絞り、考え方から進め方までを整理してみました。
本コラムは、イベントのアップグレードを探している方に向けた入門編です!
そもそも「カーボンオフセット」とは?イベントの運営にどう関係する?
「カーボンオフセット」とは、日常生活や経済活動によって排出されるCO₂(=カーボン)について、少なくする取り組みをしたうえで、それでも出る分を埋め合わせる・相殺する(=オフセット)考え方。
近年は特に地球温暖化の大きな原因としても有名なCO₂。
できるだけ減らして、《参加して楽しい+未来にも良いイベント》にできたらいいですよね。

例えば、イベントでは主にこのような場面でCO₂が発生します。
・主催者や出演者、来場者の移動
・会場で使用する電気(照明・空調・音響など)
・印刷物や備品の使用
・廃棄物の処理 など
これらに対して、自家用車ではなく相乗りや公共交通機関をすすめる(=移動エネルギーの削減)、フードは地産地消を多く取り入れる(=運搬エネルギーの削減)などなど…CO₂をできるだけ抑え、それでも出てしまう分は、海や森の吸収量、地域でつくられた再エネ電気を買うことでオフセット(相殺)します。

【ポイント】まずはCO₂の排出を把握しよう!
環境省「カーボン・オフセットガイドライン Ver.3.0」などでも、「まず削減、次にオフセット」の順序が基本とされています。
まずは、イベントのどんなところからCO₂が排出されるのか「把握」することが大事!
すべてを完璧に把握する必要はありません!
まずは把握できる範囲から整理し、「自分たちのイベントではどこでエネルギーを使っているのか」を知ること。
それがとても大きな第一歩です。
その中で、できる範囲でのオフセットに挑戦してみましょう!

イベントに取り入れることで、こんなに良いことが!?得られるメリット
カーボンオフセットは、環境にいいだけでなく、イベント運営の考え方そのものを整理するきっかけにも。
主催者にとっては、環境への配慮を「意識しています!」の言葉だけでなく、「どの部分で、どのような工夫をしたのか」を公表できる点が大きなメリット。
協賛企業や関係団体、自治体に対しても、取り組みの背景や狙いを共有しやすくなります。
企業で取り組むSDGsや、ひいてはCSR(企業の社会的責任)をはじめ、自社のブランディングにも寄与。

地域へのメリットも見逃せません。
オフセットに活用されるクレジットの中には、地域の森林整備や再生可能エネルギーの導入によって創出されたものがあります。
イベントでこうしたクレジットを活用することは、地域の環境保全活動を支えることにもつながるんです!
例えばオフセットの方法に「地域の森林の吸収量」を選べば、購入資金の一部が森林保全の資金となり、豊かな森を育てることにつながります。

ほかにも、屋根上で発電した再エネを選べば、地域の再エネ事業を応援することにも!
出雲市では「神話の國出雲さんさん倶楽部」の取り組みが紹介されています。
市内住宅に設置された太陽光発電設備によるCO₂削減量を取りまとめ、J-クレジットとして活用。
イベントでのカーボンオフセットにも利用されています。
▼関連リンク
出雲市「神話の國出雲さんさん倶楽部(J-クレジット制度の活用事業)」

また、地域の企業の田部グループでは、島根県内の森林整備によって増えたCO₂吸収量をクレジットとして活用してきました。
たとえばイベントでクレジットを購入すると、その資金が森林の間伐などの整備に活用され、地域の森の手入れを支えることにもつながります。
▼関連リンク
カーボンオフセットの導入5ステップ

ステップ1:対象範囲を決めよう
最初に、今回のイベントでどこまでをカーボンオフセットの対象にするか決めます。
会場の電気だけ、来場者の移動だけなど範囲を絞ってもOK。
予算などを考慮しながら、チャレンジしてみましょう。
ステップ2:活動量を集める
次に、排出量を算定するためのデータを集めます。電気使用量(kWh)、来場者数や移動手段、移動距離の目安など、後から説明できる形で記録しておきます。
ステップ3:排出量を計算する
排出量は、下記の基本式で算定します。
CO₂排出量=活動量×排出係数
排出係数には、電力や燃料など複数の体系があるため、用途に応じて環境省HP「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」ページを確認しましょう。
▼関連リンク

ステップ4:できる工夫を先に実践
算定結果を見て、自力で削減できる部分があれば取り組みます。
空調や照明設定の見直し、公共交通利用の事前案内、印刷物の削減など、小さな工夫でも積み重ねが大切!
ステップ5:オフセット・精算&無効化
削減しても出てしまう分は、クレジットを購入してオフセット(=相殺)します。
国が認証する「J-クレジット」を使う時は、購入後に登録簿で管理し、「無効化(=使ったことにする手続き)」まで行って二重利用を防ぎましょう。
さらに、対象範囲・算定方法・使ったクレジットを整理して、終了後に報告すると透明性が高まります。

もしもをシミュレーション!小規模イベント開催時のカーボンオフセットの導入例
基本をさっくりご紹介したところで、よりイメージしやすいよう公民館を拠点に屋内外で開催するイベント(来場者700人)を想定した試算例をご紹介。小規模なイベントでも、考え方は同じです。
ちなみに、CO₂の排出量は t-CO₂(トン)で表します。目安でいくと、一般家庭の1年間のCO₂の排出量は2.59tだそう。
出典:環境省HP「家庭部門のCO₂排出実態統計調査」
このあと紹介する試算例は、環境省などの排出係数を参照して計算する前提で、ざっくりとしたイメージをつかむための例として見てください。

《想定条件》
・会場電気使用量:940kWh
・来場者700人
自家用車500人(250台、往復10km)
徒歩・自転車・公共交通200人
《試算例》
車移動:2,500km ÷ 燃費11km/L =227.27L
電気:940kWh
→合計約1.0t-CO₂(排出量は1トン)
条件を整理して試算することで、「次はどこを減らせそうか」、「どの部分をオフセットするか」が見えてきます。

県内の相談窓口・事例から考える導入のヒント
島根県では、森林分野のJ-クレジット制度に関する相談窓口が設けられています。
制度の仕組みや手続きについて不安がある場合は、早めに相談することでスムーズに進められますよ。
▼関連リンク
県内では、出雲市「いずも産業未来博+脱炭素フェア」のように、市内で創出されたJ-クレジットをイベントに活用した事例も。
来場者や関係者に向けて、なぜこの取り組みを行ったのかを丁寧に伝えることで、環境配慮の意義を共有しています。

また、奥出雲町では、J-クレジットの活用も含めたカーボンニュートラル実現に向けた連携の取り組みが紹介されています。
▼関連リンク
奥出雲町「(株)山陰合同銀行 (株)バイウィル と「カーボンニュートラル実現に向けた連携協定」を締結」
大田市でも、市有林や市行造林を対象に、森林管理による吸収量をJ-クレジットとして登録申請する取り組みが紹介されています。
▼関連リンク
大田市「大田市有林及び大田市行造林(分収造林)を対象としたJクレジット制度への取組について」

こうした事例に共通しているのは、「できる範囲から始め、少しずつ積み重ねている」こと。
カーボンオフセットは、環境のために何かをガマンする取り組みではありません。
イベント運営を見直す中で、地域や来場者との関係を一歩先へ進めるための選択肢。
すべてのイベントが同じことをする必要はありません。
島根県内の事例を参考にしながら、自分たちのイベントに合った形を探してみてください。
その一歩が、次の企画につながっていくハズです。

環境にやさしいだけでなく、参加者に「いいイベントだったね」と思ってもらえる工夫にもなり、地域の森林や再エネの取組を応援する形にもつながります。
主催者にとっても、取り組みを言葉で伝えやすくなり、協賛企業や関係団体との対話のきっかけに!
オフセットに使うクレジットには、森林由来だけでなく、再エネや省エネなど、さまざまなタイプがあります。
廃棄物を活用したプロジェクトをはじめ、探してみるとその種類の多さにビックリするかも。
イベントの趣旨や地域性に合わせて、選択肢を比べてみるのもひとつですね。