さんべ縄文の森ミュージアム(三瓶小豆原埋没林公園)

島根県大田市にある三瓶小豆原埋没林公園

お申し込みはこちらから

埋没林について

埋没林について

三瓶小豆原埋没林を児童生徒の学びにつなげるために


1.原始の森から現代の環境を考える(総合、SDGs、地域学習)

(1)太古の森の大きさ
 三瓶小豆原埋没林では、約4000年前の森林の大きさを実感できます。
 地下展示室では当時の姿のまま立つ幹を見上げることができ、当時の森が現代の日本列島では見られない規模のものだったことを直感的に知ることができます。
 過去の森を見上げる体験の貴重さを伝える工夫をしたいと思います。

(2)自然環境と人の関わり
 太古の森の大きさを知り、現代の自然環境との違いを考えることで、変化の理由まで想像がふくらむことが理想です。
 三瓶小豆原埋没林で原始の森林の巨大さを実感してもらった上で、現代の環境は人が関わることで成立したことを伝え、私たちが暮らす環境について考えてもらうことができれば、環境学習につながると思われます。

(3)地域史との関わり
 島根県の山林は樹齢が若い二次林または植林が大部分をしめ、全国で最も森林が貧弱な地域のひとつです。三瓶小豆原埋没林とは対極と言える状態の山林が成立した背景には、当地が金属生産地だったことがあります。大きく影響を及ぼしたのは中世から近世の「製鉄」で、それに比べると木材利用の規模は小さいものの、石見銀山での製錬と生活も山林利用に影響を及ぼしました。三瓶小豆原埋没林での体験が、地域史と環境の関係を考えるきっかけになると思われます。


2.火山としての三瓶山を知る(地域学習・理科)

 多くの学校で校歌に三瓶山を歌うように、三瓶山は地域の象徴としての意味を持ちます。独立峰で遠くからよく目立ち、水源の山として信仰の対象でもあったために古くから強く意識されてきた山です。
 独立峰、水源の山という特徴は火山としての生い立ちが関係しています。三瓶小豆原埋没林が三瓶火山の噴火で埋もれたことを知ることは、火山が持つ驚異的な力に気づくきっかけになり、三瓶山について新たな視点が加わると思われます。


3.樹木の生長を知る(理科)

 三瓶小豆原埋没林の巨木はスギが中心です。その年輪は現代の山林のスギに比べて幅が狭く、生長速度は遅く、時間をかけて大きく育ったことを物語ります。
 三瓶小豆原埋没林の木々は、森林内の薄暗い環境で育った二世代目以降のもので、日当たりが悪かったことが生長の遅さとまっすぐな樹形につながっています。これは小学校5年生の理科で学ぶ内容と関係しており、5年生の秋以降であれば関連づけやすい要素です。
 森の中で樹木が世代交代することで、樹高が高くある程度暗い環境で育つ樹種の割合が増し、ついには1,2種が圧倒的に多い森林(極相林)が形成されることも伝えたい要素です。小学生にとってはわかりにくい内容なので、これを伝えるときは単純化の工夫が必要と思われます。


4.学びが気づきにつながることを知る

 三瓶小豆原埋没林の発見は、大田高校などで教鞭をとった松井整司先生の功績によります。島根大学で地質学を学び、地学部の顧問の傍ら火山としての三瓶山や地域の地質を研究してきた松井先生の経験に基づく洞察力と、地下に埋もれる森を見つけたいという学術的な情熱が埋没林の発見につながりました。これは、学校での学びと日頃の学びが気づきのもとになり、新しい発見につながることの教訓とも言えます。
 また、松井先生の調査をもとに島根県が発掘調査を行った理由は、自然博物館を建てる計画のためでした。松江や出雲の都市部に建てる案と三瓶自然館を拡充整備する2案があり、埋没林の発見によって三瓶自然館案に決定しました。松井先生の気づきと情熱が自然博物館としての三瓶自然館を大田市にもたらしたことも、大田市の子どもたちには知ってもらう意味がありそうです。


5.現地を保存しながら展示するための工夫を知る

 環境を制御できる屋内での展示と異なり、外の環境と連続する現地展示は展示環境を一定に保つことが難しいものです。
 腐朽や変形の危険性がある材の現地展示として、三瓶小豆原埋没林は前例がない規模であり、に規模が大きく、保存管理の方法が確立していないままで展示を始めた経緯があります。そのため、現在も保存管理の対策や観察を続けており、保存管理を指導する専門家はこの展示を「壮大な実験」と呼んでいます。簡単に正解が得られることが当たり前になっている時代に、正解がない取り組みを続けていることは、教科とは違う学びの要素になります。