【特別連載3】再エネ、実は新しくない!?島根「最古の再エネ」見に行ってみた!
再エネ、実は新しくない!?
島根最古の水力発電を見に行ってみた!
再生可能エネルギー、略して「再エネ」。
お家に設置された太陽光パネルをはじめ、身近になりつつある存在だけど、その実態は謎・・・という方も多いのでは?
そこで今回は、再エネのひとつ「水力発電」が行われている現場へ突撃。
知られざる発電所の内部、発電の仕組みなど、まるっとレポートします。
この発電所、なんと島根「最古」。
発電所ながらも細かい意匠が施され、近代建築好きの間でファンが多い場所なんだとか!
現役でモリモリ発電中!出雲市「窪田発電所」へ潜入
今回、突撃したのは出雲市佐田町の山あいにある「窪田(くぼた)発電所」。
中国電力が管理する水力発電所のひとつです。
中国電力管轄の島根県内の水力発電所は全部で17ヶ所。
そのうち、斐伊川水系には「窪田発電所」を含む、8ヶ所の発電所があります。
斐伊川水系の河川である神戸川(かんどがわ)に沿って、自然豊かな町の景観に溶け込むようにして立つ「窪田発電所」。
運用開始は大正4年(1915年)と、現役の水力発電所としては“県内最古”の歴史があります!
木造の建物は切妻屋根造。正面上部にはアーチが設けられ、左右にあしらわれた旭日のデザインが印象的です。
近代建築が好きな人の間では、運用開始当初からの機能のまま、今なお現役で稼働している近代建築として人気とか。
それでは、いよいよ内部へ!
機械で埋め尽くされているかと思いきや、意外と中はスッキリとしていて広々。
水車・発電機が各2基設置されています。
「ゴ~!ゴ~!」とド迫力の音を立てながら回転する水車、そして発電機。
その頭上に広がる屋根は、100年以上の歴史が刻まれたレトロな風合いです。
水力発電はどうやって発電するの?
そもそも水力発電とは、どのように発電するんでしょうか?「窪田発電所」で解説しましょう!
水力発電はたくさんの水を使用します。その水は、「窪田発電所」から数キロ離れた上流にある「窪田ダム」(取水堰)から取水。
ここから不要物を取り除く沈砂池と水槽を経由し、発電所へ水を送っていきます。
写真はダムから取水した水を一時的に貯めておく水槽。
発電所で使う水の微小な変動を調整することで、一定の水量を安定して発電所へ送水できるようになっています。
必要以上の水は水槽から自然にこぼれていく。見た目はアナログだけど、とっても理にかなったシンプルな仕組み!
窪田ダムから発電所までは約30メートルの落差があります。
この高低差を利用して勢いよく発電所へ向けて送水!
この時の最大使用水量は2.92立方メートル毎秒。
200リットルのドラム缶に換算すると、なんと1秒間に約15本分にもなるそうです。
そして、流れ落ちてきた水によって水車が回転し、直結した発電機が動くことで電気がつくられます。
発電機をよ~く見てみると、ものすごい勢いで回転していることが分かります。
水力発電は発電する際、ほとんどCO₂が排出されず、かつ自然にあるもの=枯渇しないエネルギー源を活用することから「再生可能エネルギー」の代表例とも言えます。
水車を回した水も川に放水されるため、環境への負荷は最小限と、とってもサステナブル!
建物は最古、だけど設備は最新!
大正4年に運用を開始し、昭和56年に無人化された「窪田発電所」。
平成元年に改修され、以降も定期的に人の手によってメンテナンスが行われています。
「最古」と聞くと、古いイメージがありますが、実は設備自体は最新鋭!
一般的な水力発電所の中では小規模なものの、発電機・水車は最新だから見た目以上に高スペックなんですよ。
水車は羽根が固定された「フランシス水車」。
広く普及しているタイプの水車で、「ランナ」と呼ばれる羽根車が水を受けて回転し、発電機を動かします。
「窪田発電所」のランナは直径0.6メートルとコンパクトながら重さは250キロ!
この重量のかたまりが勢いよく回転することからも、水の勢いのスゴさを実感できますね。
気になる発電量は出力600kW、年間(10年平均)だと約400万kWhにもなります。
これは、発電所がある出雲市佐田町の全世帯(約1,100世帯)の電気のほとんどを、この発電所でまかなえる発電量!
見た目はレトロでコンパクトだけど、中身はとってもパワフルなんですね。
注目度上昇中の「小水力発電」
クリーンなエネルギーを生み出す水力発電は、再エネ導入推進の機運の高まりを受け、改めて注目されているキーワードのひとつ。
その中で今、熱い視線を集めているのが「小水力発電」です。
水力発電は一般的に、ダムなどの取水地から水を引き、その水の勢いを使って発電します。
一方の「小水力発電」は大規模な設備投資が不要な点が大きな特徴。
川の流れの中に設置したり、川から引いた水路に水車を設置したり。
さらには、上下水道を利用するものなど、水流があるところなら、さまざまな場所で設置ができる発電スタイルです。
発電できる量が限られる、水利権の整理など課題はあるものの、大規模な工事が不要なことから環境への影響を抑えられるメリットがあります。
加えて、都市部・郊外を問わず設置でき、水源近くの自治体が管理できるため、“電力の地産地消”が叶うかも。
近い将来、再エネとしての水力発電がもっと身近になるかもしれませんね。
ミニコラム《再エネdeフォト散歩》実はあなたのそばにも!
何気なく通っている道沿い、いつも子どもと遊んでいる公園など、実はみなさんの身の回りにも再エネスポットがいっぱい。
「もしかして再エネ?」をキーワードに街歩き&ドライブを楽しんでみては!
みさき親水公園(安来市)
工場エリアを抜けた先に広がる、水辺のひと休みスポット。
晴れた日には大山を望み、夕暮れのサンセットタイムが心地いい公園です。
パッと見た目では分かりづらいですが、よく見ると街灯が再エネスタイル。
風車とソーラー発電が一体になっています。
街灯に再エネが採用されるケースが増えつつあるので、みなさんの近くにあるかもしれませんよ。
■DATA
[場所]安来市亀島町9-10
江津高野山風力発電所(江津市)
平成18~20年度にかけて建設された風力発電所。
島根県における大規模風力発電開発のパイオニア的な存在で、高野山に9基が点在しています。
壮大な景色が広がる中、特に夕暮れに浮かび上がるシルエットがフォトジェニック。
ゆったりと回る風車はボーっと眺めていたくなります。
発電所全体は「江高麻呂(エコまろ)」、1号風車は「風電(ふうでん)」など、個性豊かなニックネームがおもしろい!
近くまで立ち寄れるので、ドライブがてら行ってみてくださいね。
■DATA
[場所]江津市二宮町、千田町、敬川町
石見空港太陽光発電所(益田市)
石見エリアの空の玄関口「萩・石見空港」に設置された太陽光発電所。
パネル枚数は1万4,336枚、目標電力量は年間413万3,000kWh。
空港に隣接した「萩・石見空港 風の丘広場」から、飛行機と2ショットで見応え抜群!
太陽の方を向いた太陽光パネルは、どことなく夏のひまわりを思わせます。
■DATA
[場所]益田市高津町
三成発電所・三成ダム(奥出雲町)
名作「砂の器」ゆかりの地、奥出雲町亀嵩近く、国道432号沿いにある水力発電所。
昭和28年10月に運転開始した島根県初の県営発電所です。
そこからさらに東へ進むと、日本で最初のアーチダム「三成ダム」が登場。
山あいで圧倒的な存在感を放つ土木遺産です。
新緑がまぶしい初夏、紅葉に彩られた秋など、季節ごとの景観も必見ですよ。
■DATA
[場所]奥出雲町三成1394-3
島根県企業局では再エネ見学ツアーを開催しています
島根県企業局では、今回紹介した施設を含む、県内のインフラ設備の見学・ツアー、出前授業などを実施中。
個人で参加できる場合もあるので、HPをチェックしてみて。
■リンク
島根県企業局の施設見学
https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/energy/energy/denki_jigyo/kengaku/
続けてチェック!再エネシリーズ
【特別連載1】5分で分かる「再エネ」のキホン!「再生可能エネルギーとは?」をまるっと解説
【特別連載2】これからの家の主流!?島根発の「再エネ住宅」ルームツアー