未来へ続く新たな海の事業を展開 とれた魚は全て活かす!株式会社永幸丸 永見さん

2024.02.13

 

 

 

 

島根県は日本海の幸に恵まれた漁業が盛んな地域です。松江の市街地から車で20分も走れば、そこには透き通るコバルトブルーの海が広がっています。
 

2020年、都会から松江市島根町に移り住んだ永見輝晃(ながみ てるあき)さん一家は、自然に囲まれた暮らしを楽しみながら、未来へ続く新しい漁業やライフスタイルを実践しています。
 

そんな永見さんに、とれた魚を全て生かす取り組みなどについてお話をうかがいました。




―松江市島根町を拠点に「株式会社 永幸丸」を立ち上げ、事業展開をしていらっしゃいます。





2023年3月に株式会社永幸丸(えいこうまる)としてスタートしました。

2023年8月現在で従業員は2名、アルバイト4名です。






岩ガキの養殖・販売、定置網、かご漁、水産品製造業をはじめ、釣り、サップ、シュノーケリング、遊漁船などのマリンアクティビティ、1棟貸しの宿や飲食店を経営しています。





―島根に移住する前は、どのような生活を送っていたのですか?

 



育ったのは静岡県の焼津の隣、吉田町です。


その頃は海の仕事に関心がなく、横浜の大学を卒業して医療系の商社に勤めました。営業職に就いたのですが、あまりの仕事量に転職しました。
 

以前から「自然の豊かな環境で生活したい」というイメージを妻と共有していて、50歳くらいからは自給自足での生活を考えていました。でも、コロナ感染症が流行したことで早めた方がいいと判断し、舵を切りました。
 

家族で1台の車に乗り、移住先を探して九州から四国を回り、最後に一度来たことがある島根を走っていたときに出雲平野がわーっと広がっていたんです。
 

空が近くてきれいな感じで、「気」がいいというか、「やっぱりここだね」と家族で話し合い、島根に決めました。
 

その後、移住の相談をしたふるさと定住財団の職員さんを始め、会う人がみんないい人で、「島根っていい人しかいないの?」って困惑するくらい人に恵まれたのも大きかったです。


 

―Iターンで地域のコミュニティに飛び込むのは大変だったのでは?





定住財団の産業体験では、農業、林業、漁業を希望し、最初に紹介してもらったのが漁業体験のできる野井漁港の定置網漁でした。






もともと船酔いはするし、魚が嫌いだったし、カキも食べたことなかったです。
 

おまけにカナヅチで泳げない。出雲弁もわからない。周囲には「続くわけがない」という空気がありました(笑)。




ちょうど僕が来た頃、コロナ感染症の流行で出荷できなかった岩ガキが育ちすぎて、もう捨てるかってなってたときで。
 

でもそんなのもったいないじゃないですか!フードロスになってしまうし。
「僕、それを買わせてもらって販売してもいいですか?」と聞いたら「いいよ」と言われたので、そのまま携帯でポチポチやって産直サイトに登録したらすぐに売れたんです。





それで、完売したことを伝えると、「こんなに売れんのか!お前、何者だ?」ってすごく喜んでくれて。
 

今までなかった販路の開拓とか、突然来たテレビ番組の取材協力とか、新しい風になれるよう沢山の可能性を探しながら少しずつ地元の漁師さんたちと距離が近くなり、半月経った頃にはすっかり馴染んでいました。


 

―漁業体験を通じて、問題意識も生まれたとか・・・。





定置網漁で魚を獲ると、必ず残る魚があるんです。
 

「未利用魚(みりようぎょ)」って呼ばれてるんですけど、市場に出しても傷がついている。認知されていない。などの理由で値段がつかないので卸さず海に戻します。

 



一度網にかかった魚は戻しても生きられません。海の養分にはなると思うのですが、殺しているということが辛くなったんです。
 

普段から、蚊も殺さないという価値観で生きてきましたから。


 

―それが普段は市場に出回らない魚の販売の始まりだったのですね?






おそらく、野井に限ったことではなく世界中で同じことが行われていると気づいたとき、一番解決するべき問題だと感じました。






今は、「未利用魚」という表現で知られるようにもなっていますが、本来、どの魚にも名前があります。
 

でも、僕はそれらの名前すら知らなかった。それで、写真で撮って魚を調べるアプリを使って名前を知り、食べる方法を調べました。
 

実際に料理してみたら、美味しく食べられることがわかったのです。





ほとんどの魚が美味いです。新鮮なので、基本は刺身です。塩焼き、醤油漬け、から揚げとかもいいですね。
 

サメも水揚げしてすぐに腹を開けて内臓を出してあげればアンモニア臭もなくなり、それをぶつ切りにして湯引きすると高級なハモのような味がします。
 

地元では、松江市内のスーパー「みしまや」で売ってもらっています。




ある時、小さなパックに「オジサン」というひげの生えた黄色の魚をちょこんと入れて100円と値札を付けました。
 

子どもたちが見ると「オジサン!?ナニコレ!」って興味を持ちますよね。
 

これも魚を知るいい機会になっていると思います。今の子どもたちは、切り身が泳いでいると思っていたりするので。



―ネット販売もされているそうですね。

 




ネットの通信販売では「チャレンジフィッシュボックス」という商品があります。
 

北海道、青森、島根、香川の4県の漁師が一般に出回らない珍しい魚を箱の中に入れて送るという販売システムです。
 

送られてくる方は調べて料理する。それも楽しいですよね。

 

―反響はいかがですか?

 




料理は、僕もインスタとかにアップしていて、いろいろなところから反応があります。
 

例えば、大学の先生だったり、漁業のNSC認証、いわゆる持続可能な漁業の認証審査員をやっている人だったり。
 

大学のゼミの学生が取材に来たこともありました。意義も意味も、とてもあると感じています。
 

ただ、そういう魚に値段が付くようになると、それまでの魚の価格が崩れる可能性があるので、その先のことや背景も考えて提供する必要があると考えています。


 

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