町の宝物を受け継ぎ、未来に羽ばたく子どもたちを応援する Cafe and Gallery鐘や 八嶋さん(2)

2024.03.27

 

―通りを歩いていたら、ガラス越しにギャラリーが見えてわくわくしました

 

 

 


ここのお話をいただいたとき、画家をしている息子夫婦が「自分たちも地域の方や子どもたちのためにギャラリーをしたい」と言ってくれました。
 

都会だと美術館や企業ミュージアム、コンサートなど芸術に触れる機会がたくさんあると思います。
 

この町も、子どもたちが毎日通う道にギャラリーがあって、ガラス越しに作品を見ながら学校に行けたらいいなと。

 

 


展示室は、凹凸や装飾の無いホワイトキューブのギャラリーをイメージし、均質に明るく、置くものすべてがどの方向からも映える設計です。

 

 

 


日本画や油絵、写真、陶芸、漆器、張り子など展示は2か月おきくらいに交換していて、息子夫婦のネットワークで協力してくれる作家さんを探し、今は資金がないので自分たちでトラックを借りて運搬しています。

 

 

絵画コンクールや「鐘や市」など様々なイベントを開催されています

 

 


絵の展示で協力していただいている作家さんにワークショップを開いてもらったり、絵画コンクールを開催したりしています。

 

 

 


昨年は、3歳から高校生までの参加者で飯南町の琴引山から眺めた町の風景を描いたり、飯南町の土と広島県の土を使ってクレヨンを作ったりといったワークショップを開催しました。
 

はじめは乗り気ではなかったお子さんが、「この土とこの土を混ぜるとこんな色になる!」と、科学反応を楽しむように何色も作って帰られました。

 

 


また、昨年は小学生から高校生を対象に第1回「子どもたちの絵画コンクール」を開催し、ネットで募集しました。
 

優秀作品は「鐘や」のギャラリーで展示しました。副賞にはここのカフェの食事券をさしあげました。

 

 

―旅館であった頃と同じく、人や文化が集まる場所になっているのですね

 

 


「鐘や市(かねやいち)」というイベントでは、地元のお野菜や手作りお菓子に加えて町外に行かないとないもの、例えば、本屋さんや花屋さん、パン屋さん、コーヒー屋さんに来てもらったりしています。

 

 


松江の紅茶専門店さんにも来ていただいて、紅茶のかき氷を出してもらった時は「何十年ぶりにかき氷を食べておいしかった!」と来店したおばあちゃんに言ってもらえて嬉しかったですね。

 

 

 


家族や友達、周りを巻き込んで、みんなで企画をしたりアドバイスをもらったり。
一人でできないことを、いろんな方に助けてもらってやっています。

 

「ここ、今度何するのかな」と思ってもらえる場所になるといいなと思います。

 

 

「塩屋」の建物と共に歴史を重ねて、内装には懐かしさも感じられます

 

 


改装においても、古民家再生を手掛けるデザイナーさんやお店をされている方、一緒にクラファンや資金繰りに奔走してくれたプロジェクトメンバーをはじめ、たくさんの方に助けてもらいました。

 

 

 


古いところをきちんと残しつつ、少し非日常的なモダンさを加え、みなさんに親しんでもらいたい。
 

田舎だから適当ではなく、この建物が持つ雰囲気を生かして欲しいとこだわりました。

 

 

 


奥のお座敷はほとんど変わっていません。
 

壁や障子はアクリル板にしただけで、壁や襖は和紙で張り替えました。
 

梁などの構造物は大切に生かしています。

 

 

 


一度壊してしまうと、二度と戻らない雰囲気や建物が持つ人々の記憶、歴史があります。
 

以前、地域のおばあちゃんが来られて、「あれ、私ここでお見合いしましたよ」とおっしゃったんです。
 

一緒にいたお嫁さんも「えっ初耳!」ってなって。
 

変わるところはあっても、全体的には変わらない。
記憶がよみがえるというか、建物が持つ懐かしさと一緒に次世代の人に使ってもらえたらいいなと。

 

 

―店内あちらこちらに飾ってあるお花もステキです

 

 


近くの野山に咲く花や庭で育てた花を地元の方が届けてくださっています。
 

カフェの花は私やスタッフが生けていますが、廊下の花は「お手伝いしましょう」と、近隣の方が生けた花を花器ごと持ってきてくださるんです。
 

お客さまから花の名前を聞かれて会話するのも楽しいです。

 

 

「鐘や」を未来に繋いでいくお気持ちを伺いたいです

 

 


これからも、目指すのは〝中高生たちのお腹を満たす″〝地域の財産である伝統的建造物を守る″〝本物の芸術に触れてもらう″ことです。

 

 

 


そこを軸にして、地元の方にサロンとして活用していただいたり、ワークショップやマルシェを開催したりして、誰もが元気が出るような仕掛けを、地域のみなさんとともに計画していきたいと考えています。
 

そして、ここに通った子どもたちが大人になって活躍したり、ここで過ごした時間を思い出してくれたりしたら、私たちスタッフはとても幸せです。

 

 

―看板には、かわいらしい子どもの姿が描かれています。「鐘や」という店名に込める思いを聞かせてください

 

 


ここは、昔はとても賑わっていて人もたくさんいました。そういう賑わいを取り戻したい、子どもたちに賑わいの始まりの鐘を鳴らして欲しいという思いで「鐘や」としました。
 

看板に描かれているのは、その鐘を鳴らす子どもです。
 

「未来に希望の鐘を鳴らす子どもたちを応援するカフェでありたい。地域に文化の灯をともし続け、ここから地域を明るく照らしたい」ということが、私たちが伝えたい思いです。
 

これからも、子どもたちをはじめたくさんのお客さまに地元の食材を楽しみ、日本建築や美術などに触れていただいて、様々な交流が始まる場になることを願っています。

 

 

 

 

✿八嶋さんおすすめプチサステナブル

使い捨てのプラスチックは、なるべく使わない様に意識しています。ドレッシングで使った国産レモンの皮を砂糖漬けにして、箸休めにしていますが美味しいですよ!使用後の割り箸は薪ストーブの焚き付けにも使えますね。

 

 

【インタビュアー感想】

 取材中、山から採ってきたというオレンジ色の実の付いたリースをテーブルの上に置き、そのまま帰って行った地元の方の姿が印象に残っています。「鐘や」には、自分も応援者になりたいと思わせてしまう不思議な力があるようです。

始まりからずっと八嶋さんの芯はぶれていません。いつも、子どもたちのため、地域のみなさんのため。だからこそ、地元の温かい手が差し伸べられるのでしょう。

歴史を重ね、新たな使命をもって再生した「鐘や」。人や地域をつなぐ架け橋として、いつまでも続いていきますように。(2023年8月取材)

 

 

  

 


飯南町の食材を楽しみながら
子どもたちの応援もできる

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