世界と繋がるしまねの海 ダイビングショップシーワーク 清水さん(2)
―海に入って生き物を間近で見ると、テレビや写真で見るのと違う印象になりそうですね。
僕自身もそうですが、生き物と向き合っていると自然の美しさや不思議さをあらためて感じるもの。
海の中で生き物を見ると、そういう感覚になるのかもしれません。
「潜ってみたら、海の生き物がとても身近に感じられるようになった。愛おしさが芽生えた」というお客さんはすごく多いですね。
たとえばダンゴウオという魚がいるんですが、丸っこいフォルムで人気なんです。
小さな体で一生懸命岩にしがみつく姿が愛おしくて、「またこの子に会いたい」「成長を見守りたい」とまめに来られるお客さんもいます。
海の生き物を見て愛でるだけでなく、生態に興味を持って学び始める方も少なくないです。
ウミウシの研究者が撮影に訪れることもあるので、タイミングが合えばお客さん向けに講習会を開くこともあります。
—そういう気持ちになると、海を〝生き物たちの家〟と感じるようになりそうですね。
みなさんそう言いますよ。
小さな体で一生懸命生きる様子や、必死で卵を守る姿なんて見てしまったら、彼らのふるさとであり家である海を守ろうという意識が自然に芽生えるようです。
実際、ダイバーの意識は年々代わっています。
例えば、寒いときにウエットスーツの中に発泡入浴剤を入れたり、体を温めるジェルを塗っていた時代がありましたが、今は環境に影響がない専用の製品にシフトしています。
お客さんの中には、潜ったついでにゴミを拾って上がる方も多いですよ。
—海にはどんなゴミがありますか?
ビニール袋、空き缶、壊れた漁具、発泡スチロール、、ブルーシート、ゴルフボール、流木も多いです。
都市部から川を流れてきたと思われるレジ袋やペットボトル、スナック菓子の袋、洗剤の容器といった生活用品もよく見ます。
また、国内だけでなく、外国のゴミも流れてきます。
海は世界と繋がっているからです。
人が何気なく放り捨てたゴミは、最終的に世界の海に影響を与えてしまいます。
最近はイルカやウミガメなどがゴミを飲み込んで死んでしまったり、生き物がゴミにからまってしまう事故もニュースなどでよく聞きます。
これは大田の海でも十分に起こりえる話です。
SEA WORKでは水中や浜でのクリーンアップ活動をしています。
地域の自然を守るために今後もなるべく続けていきたいですが、一番大切なのは海までゴミが来ないこと。
川は海に山間部から養分を届ける働きがあります。
なので漁師さんたちも上流域の環境が気になるそうです。
海を守るためには、山や川のことも考え生活圏からゴミが流れて込まないようにするべきだと思います。
暮らしの中での心がけの積み重ねが、島根県の大切な自然を守ると知ってほしいです。
―奥様も地域でお仕事をされているとお聞きしました。
高齢になって遠出ができなくなり、日々の買い物に困っている方のために移動スーパーをしています。
車の運転ができない高齢者が多く、バスで出掛けるのも困難で、「スーパーの中で商品を探し歩くのも辛い」という声もあるからです。
決まった曜日に食品や日用品などを積んで、依頼があった方の地域に届ける。
軽自動車で出向くので、路地の奥のなどもこまめにカバーできるんですよ。
―地域での活動を通じて、約10年後、2030年に繋ぎたいことはありますか?
ダイビングで地域の活性化に貢献していきたいです。
ダイビングツアーの誘致は経済効果があります。
大田の魅力を知ってもらうため、普段から提供するお弁当など地元の魚屋さんに頼み、近海ものの魚で作ってもらっています。
また、宿や飲食店も市内をおすすめしています。
少しでも地域の経済が潤えば嬉しい。
通ううちに大田に住み始めた人や、パートナーを見つけて結婚した人もいますよ。
非常勤インストラクターのジルベルトさんはブラジル出身で、大田を気に入って移住した人の一人です。
少しずつ事業を広げてたくさんの人に大田に来ていただきたいです!
―清水さんはパパでもありますね。お子さんの世代に手渡したいものはありますか?
大田の海は、息子たちの世代に「ここがふるさとの海だよ!」と自慢できる素晴らしい海。
今後は磯遊びなどを企画して、子どもたちに生き物や自然について楽しく教えていきたいです。
そのためにはこの海の環境を守り続けることが不可欠。
浜や港の清掃活動を、個人の範囲だけでなく、さまざまな人に広げていきたいです。
—清水さんのオススメの大田の海での過ごし方があれば教えてください。
一番はもちろんダイビング!初心者も体験でき、お子さんもOK。必要なものはレンタルできますし、水中写真のレッスンもします。
また、砂浜の散策もオススメ。
貝殻やイカの骨などを拾ったり、ハマボウフウなど食べられる植物を探すのも楽しいですよ。
このあたりはブラジル人の方が多く、砂浜で食事したり踊ったりしているのをよく見かけます。
彼らはゴミ一つ残さずキレイにして帰るのが素晴らしい!
意外なことですが、自然の中で遊ぶことに慣れているひとほどマナーが良い。
ごみをまき散らし、騒ぎ帰るのは遊び慣れていないひとです。
ぜひ自然に触れる機会をたくさんもち、楽しんでください。
■清水さん一押し!今日からできる楽しいプチエコ■
一枚のレジ袋が海の生き物の命を奪うかもしれません。
些細なことでも他人事と思わずに、少し気にしてみてほしいです。
夏は海水浴やバーベキューをしに浜を訪れる人が増え、食べ残しや炭、花火の燃え殻などが残されているのをよく見ます。
僕たちも見つけ次第回収しますが、とても追いつきません。ゴミを放り捨てないこと、見つけたら拾うことを心掛けてください。
身近なところで清掃活動があったら参加するのもおすすめです。
*清水さんとお話した感想*
日に焼けた健康的な笑顔が印象的な清水さん。
海の生き物についてイキイキと語るようすに思わず引き込まれ、取材陣もダイビングを始めてみたくなってしまいました。
ふるさとの風土を愛し、人との繋がりを大切にする温かい人柄に惹かれて通うダイバーも多いのではないでしょうか。
5分番組 しまねFuture2030#4
\ 世界とつながるしまねの海 /
美しい大田の海の案内人
シーワークさんの