次世代にリレーできる小さな「循環型農業」 コージーテラス 小松原さん

2025.02.27

 

 

 


有機農法でアスパラガスやレモン、アボカド、ラズベリーなどを栽培する農園「CozyTerrace(コージーテラス)」。
 

出雲市斐川町の果樹園には、アボカドの木が枝を広げ、レモン、イチジク、リンゴなどの50を超える種類の果樹がのびのび育っています。
 

飛び交うハチが受粉を助け、雑草が土の表面を覆い保水する。今や求めてこそはじめて維持できる景色です。
 

これぞ夏空の或る一日、「季節を届けたい」と有機農法に取り組み7年目を迎えた小松原さんにお話しを聞きました。

 

 

―まるで自然そのままのような、ステキな農園ですね。

アスパラガスなどを有機JASの基準で栽培されているとうかがいました。

 

 

 

広さは一反(10a)ちょっとですが、2019年に就農してから土づくりを始め、2023年からは化学肥料を使わない有機JASの基準で栽培しています。
 

小規模でやろうと思っていたので、最初から認証を取ることは考えていました。

 

 

 


取得は2025年春を予定しています。
 

有機JASの基準は厳しいですが、その基準で栽培しているアスパラガスは全国でも珍しく、自信をもって栽培しています。

 

 

 


野菜のメインはハウス栽培のアスパラガスで、果樹はアボカドやレモンの他にラズベリー、キンカン、イチジク、ポポー、リンゴなど約50種類を植えています。

 

 

 

―アボカドの木ですか?島根でもできるんですね。

 


メキシコ―ラといって寒さに強い品種で、出雲で露地栽培するとしたらこれが有力候補です。
 

農業するならアボカドはぜひやりたいと思っていて、今年7年目になります。
 

植えた当時、国産の出荷が少しずつ始まった時期だったので、「いける」と思いました。

 

 

―アボカドができるなんて、温暖化の影響もあるのでしょうか。



 

これからの気候の変化を見据えて、植える作物を変える農家は多いと思います。
 

例えば、コーヒーやカカオの原産国も暑すぎて、これまでのような収穫が難しくなってきています。

 

国内では愛媛や和歌山、熊本でアボカドを栽培していて、島根も冬のマイナスの気温は厳しいけど、ギリギリ栽培可能な気候です。

 

 

―堆肥は自家製と聞きました。見せていただけますか?

 

 


ハウスで作っているのでかなり暑いですよ。40度くらいなので覚悟して(笑)。

 

 

 


稲作で出たもみ殻をベースに生ごみ、卵殻、コーヒーかす、竹炭、木のチップなどを投入してかき混ぜながら作っています。

 

 

 

捨ててしまいそうなものを利用しているのですね。


 


質のいい堆肥にしようと思ったら山積みになるくらいのボリュームが必要です。中は50度~70度にもなります。

 

 

 

 

生ごみだけでなく、もみ殻で水分率を調整すると腐ることなく仕上がります。これらを混ぜながらハウスで寝かせることで芳醇な香りのする堆肥の完成です。

 

 

―カフェやパン、ケーキのお店で廃棄されるコーヒーかす、卵殻、バナナの皮なども利用していると聞きました。地域とはどのように連携しているのですか?

 

たとえば、出雲市にある「キノトマ」という量り売りのお店には、家庭で出るコーヒーかすを集めるステーションを置いていただいていています。
 

僕が飲食店を回れば沢山のコーヒーかすが集まるのですが、それでは「プレイヤー」が増えない。
理解者を増やすために、買い物に来たお客さんに少しでも関わってもらうことで食物の循環に繋がっていくと考えています。

 

また、そうやって作った肥料は、地域の他の農家さんにも使ってもらうことにしています。

 

 

 

―自家製の堆肥を使うことで美味しい作物ができるのですね。

 

 


実は、僕自身の堆肥に対する考え方が大きく変わりつつあるんです。
 

ずっとエース的な役割だと信じていたのですが、堆肥を入れたから最高にいいものができるのではなく、野球で例えるなら8番バッター、9番バッターぐらい。たくさん使うのは逆効果で、土に戻していく感覚です。それよりも、とにかく水ですね。

 

 

 

―今、海外の産地では、アボカドの栽培に大量の水が必要なため、水不足が問題になっていると聞きます。

 

 


なると思いますよ。アボガドのみならず植物に必要なのは80~90%が水です。
 

1に水、2に水で、それから肥料です。肥料のミネラルとか窒素分は、水100グラムとしたら3グラムぐらいなんですよ。

 

 

 

 


うちの果樹園では保水に雑草を利用していて、草が土の流出を防いだり水を染み込ませたりしてくれています。
 

人間でいえば頭髪と同じで、丸坊主だと楽ですが、髪がある方が何かあったときのクッションになり守ってくれます。紫外線も含めて。

 

 

 

 


ここでできたイチジク、アボカド、アスパラガスを用意しているので、試食してみてください。アボカドは、皮ごと食べられます。

 

 

 

―アボカドは柔らかくて、味わいや香りも外国産と遜色ないです!濃厚な甘味!

皮も表面がツルツルしていて柔らかく、抵抗なく食べられますね。

 



 

アボカドの皮には豊富な栄養が含まれていて、本来は皮ごと食べるといいです。
 

ここでは輸入物のように船で送るわけではないので、樹上完熟です。皮が黒くなってポロッと落ちるぐらいまで我慢してから収穫します。

 

 

―イチジクも甘いですね。

 

 

 

僕は小規模農家なので、イチジクは珍しい品種を作るようにしています。
 

樹上のケーキと言われるヌアールドカロン、極上の甘さのある白イチジクのロングドゥート、黒いダイヤと呼ばれているビオレソリエスなど、みんなフランス原産で市場に出回ってないものです。

 

 

 

―いろいろとプレミアが付きそうです。

 

 



確かにフランス原産のイチジクやアボカドは珍しく、国産でしかも出雲産となると付加価値も付いてプレミア商品になると思います。

 

 

 

 


でも僕は、儲け最優先ではなく地域の資源を活用してつくったものを地元のみなさんに食べて欲しいと思っています。
 

みなさんから集めたコーヒーかすや卵殻を肥料に育ているので、まずは協力店に卸しています。

 

 

 

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