日本建築の伝統の延長線上に新しい文化をつくる 「解く」守山さん(2)
―日本の古民家は、海外からの関心も高いとうかがいました。

家を「解く」という視点に立った時、日本の空き家は世界に発信できる資源なんです。
これまで、日本の古民家を丸ごと解体してフランスなど海外に移築したという例(2008年NPO法人日本古民家研究会)もあります。全てのパーツに番号をつけ、島根の大工職人が海外に出向いて組み立てたそうです。

一昨年は、空き家から取り出した古材でつくった家具や建具を、オランダで開催された日本のものづくり展示会「MONO JAPAN」に出展しました。

島根の古民家活用について、海外からの問い合わせもあります。いま、ポルトガルやオーストラリアの方から活用相談を受けています。
(オランダの展示会(MONO JAPAN)に出展した建具)
―財産の視点で言うと、家は動かないから不動産なのに、解体して運んだら「有動産」ですね!

確かに!(笑) アメリカやヨーロッパでは不動産は古いほど価値が高くなることが社会課題化しています。
日本では逆に、不動産の年数が経つほどに価格が下がっていくために空き家が社会課題化しています。
この対極性が、海外の方には驚かれますし、「New York Times」紙で日本の空き家が取り上げられて話題になっています。
―古材を生かすことで廃棄処分の際に排出されるCO₂も削減されますね。

100㎡規模の伝統的建築の古民家に使用されている木材の総量は、約15㎥。木材は、1㎥あたり230㎏の炭素を含んでいるため、1件につき約3,450㎏の炭素が含まれている計算になります。
その木材を焼却した場合のCO₂排出量は、12.65tです。
一方、クロマツ15㎥を島根県からアムステルダムに海上輸送する場合は、陸送での排出量も含めて1.5tのCO₂排出量となります。
こうしてみると、焼却に比べ、CO₂が大幅に削減されることになります。
―それはすごいですね!再利用できて炭素の排出も減らすなんて。

僕たちは、県内に残る貴重な古民家は焼却処分の道をたどるのではなく、解いて活かす、いわゆる循環させることが望ましいと考えて、持続可能な運用に向けて動いています。

大きな古民家を解体しようと思うと、700万円もの解体費がかかることがあります。
処分費を削減できれば所有者の負担軽減になるのはもちろん、古材を生かすことでCO₂の排出も抑えられます。
できるだけ収支を成り立たせながら運用する仕組みを考えて、空き家の所有者、古材の活用者、活用をマネジメントする組織の3方よしを目指しています。
―私たちが古民家再生を応援したいと思ったときに、何ができるのでしょうか?

私たちは「解く TOKU」というブランドネームで空き家古民家を活用する事業を展開しています。
ウェブサイトで、空き家古民家の紹介や古材を活用してつくった家具などを紹介しているのでぜひご覧ください。
古民家の「空き家ツアー」を開催しているのでご参加もお待ちしています!
古材や移築候補としてハイクオリティのものが多いので、相談いただければ目的に合わせてご案内します。

それから、一般社団法人おおなん木の学校が、毎年1軒の空き家をターゲットにして、空き家を再生する技術を学ぶためのDIYスクールを開講しています。

自分の手で古民家を直したいという方は、これに参加するのがお勧めです。
―守山さんがこれからやってみたいことは?
自分でも古民家に住む計画を進めているところです。
古民家の梁や桁をそのままアスレチック遊具にする、というのを昔からやってみたかったので、自分の家で試してみたいと思っています。
梁から土間に滑り台をかけたり、小屋組みを渡り歩くロープ網をかけたりすると楽しそうですよね。
僕は、暮らしの空間全部を自分の手で作っていきたいというモチベーションを持っています。
いろいろな物を循環させながら何でも作る、現代版のお百姓さんのような暮らしがしたいですね。(笑)
―守山さんの手掛ける古材活用事業の目指すところは?

一番は、伝統の延長線上にある、誰も見たことのないデザインを見せていくということです。
古民家=処分するものではありません。投資として持つ人がいたり、海外に輸出したりもできます。
人の拠点となって新しいコミュニケーションを生み、鷺浦のように「藻塩つくり」など消えゆく地域の産業を未来に繋いでいる例もあります。
島根の古民家群が、未来のモデルになることをしっかり発信したいですね。
✿インタビューアーの感想✿
日本の伝統的な街並みや建築の技術は、現代に生きる私たちが手放してはいけないもののひとつであり、それを未来に向けて継承しながらバージョンアップしていくことが大切なのだと感じました。
実は、日常の身近なところに気づかない宝物がたくさん存在しているのかもしれません。
心と頭をもっと柔軟にして、「今の暮らし」を見つめ直したい気持ちになりました。
ようこそ、古民家の世界へ
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