木綿街道で変わらぬ味を守る 來間屋生姜糖本舗11代目 來間さん(2)

2019.03.07

 

―原料も製法もシンプルだからこそ、作るのが難しそうですね。

そうですね。作り方のマニュアルはなく、口伝で教えてもらいました。レシピは口伝でもわかりますが、作るときに起こる現象があまりに多すぎて、対処方法を覚えることが大変でした。例えば、春夏秋冬と季節が移りゆく中で1年を通して体験したことを、翌年また繰り返し作業しながら身につけていくのです。

 

当初は作ることに一生懸命でしたね。「できて良かった!」という時代が続き、次は「生姜糖の表面の状態を良いものにしよう」と思うようになり…と自分の中で上達の階段を上りながら今に至っています。

 

―生姜糖を作る中で気をつけていることはありますか?

生姜糖を煮詰めていくと、出来上がりの瞬間があります。その温度は温度計で計ればいつも同じ温度なのでしょうが、人の手でタイミングを計ります。季節やその日の体調など人の状態によって変わってくるので、人間の方が「ぶれない」ように気をつけています。手の温度もそうですが、心の持ちようなども影響してきます。私は作業着の白衣を着たときに職人スイッチを入れるようにしています。

 

―かわいいハート形やパッケージの生姜糖もありますね!

これは私が考案したものです。出雲は縁結びの聖地ですので、それにあやかりました。1枚板の生姜糖は創業当初からあるもので、年配のお客様に「懐かしい」と言っていただけます。なので、どちらかというと生姜糖は年配の方に喜ばれるお菓子と思っていました。しかし今は2030代の方にも新しい感覚の和菓子として好評のようです。1口生姜糖は、キャンディ感覚で食べれるので、お土産に好まれています。

また、生姜の持つ縁起の良さから結婚式の引き出物に選んでいただき、とても嬉しく思います。

 

 

―創業からの味を守り受け継ぐことは、相当の覚悟でしたか?

父親から「継いでくれ」と言われたことはなかったのですが、父親の背中を見て育ったので「将来、店を継がないといけない」とは思っていました。しかし、都会に出たくて大学卒業後も東京で暮らし、システムエンジニアをしていました。店を継いだのは、父親が亡くなった後…。なので、父親は私が跡を継いだことを知りません。天国で喜んでくれていたらいいと思います(笑)。

 

―これから挑戦してみたいことはありますか?

この木綿街道もそうですが、古いものを守りながら新しいものにチャレンジしたいです。

店のことで言えば、商品開発をしたいです。素朴で懐かしく、それでいて新しい生姜の和菓子づくりをしていきたいです。

 

 

 

 

**來間さんとお話した感想**

にこやかな笑顔が印象的な來間さん。老舗を守るプレッシャーがあるかと思いきや「11代目になる覚悟を決めてからは、一生懸命仕事をするだけでした」と語っていました。子どものころは当たり前にあった木綿街道の風情や平田船川の水景を、今は「守りたい」という思いも伝わりました。現在、島根を代表する和菓子として全国各地に來間屋生姜糖本舗ファンが多く、私も來間さんが考案された「生姜の砂糖漬け」が好物です。

老舗を受け継ぎ、守ることを選び、おいしい生姜糖を作ることに没頭する來間さんの姿が素敵でした。

 

 

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