思い出いっぱいの場所で、未来に続く農業を創る!GEARFARM星野さん
緑豊かな里山が広がる雲南市三代(みじろ)地区。
GEARFARM(ギアファーム)代表の星野和志さんはここで、こだわりのぶどうを作り、オリジナルブランド「星のぶどう」を県内外に発信しています。
星野さんがぶどう栽培を通して見つめる、島根の農業と未来について伺いました。
-星野さんのお家は、昔からぶどう農園をされているんですか?
母方の祖父母が1960年代に造った農園を受け継ぎました。
この辺りは元々神社が持っている〝神様の土地〟。
昔の人たちは神様に山や土地を使わせてもらって農業をしていたそうです。
米やタバコの栽培、養蚕などが盛んでしたが、時代に合わせて新しい作物が求められるようになり、祖父母がぶどう畑を始めたのです。
-子供の頃からぶどう農家を目指していたんですか?
中学生ぐらいの頃から農業で食べていこうと考えていました。
でも「ぶどうをやるぞ!」という具体的な考えまでは無かったです。
農業系の高校・大学に進学し、卒業後は農業法人で野菜を作っていましたが、あるとき祖父が病気になってしまったんです。
僕より上の世代に後継者はいませんでした。
祖父母にとっては苦労して開墾し育て上げた農園、母にとっては生まれ育ったふるさと、僕にとっては子供の頃に遊んだ思い出の場所。
「家族にとって大切な場所がなくなってしまう!僕が守らなければ!」と一念発起し、退職して就農しました。
今は祖母と2人でぶどうを作っています。
-三代地区は空気がキレイで清々しいですね!
夜は星がよく見えるんですよ。平地より少し気温が低く、ぶどうを栽培するのに適した土地。
水は近くにある奥田川から引いています。上流域に位置しているのでとてもキレイ!夏にはホタルが飛びます。
農園の土は、祖父母が枯れ葉や堆肥を加え、長い月日をかけて育ててきたもの。僕もその思いを受け継いで、この辺りの落ち葉や斐伊川の土手の刈り草など、地域にあるものを資源として肥やしに使うようにしています。
-自然も、おじいさんとおばあさんが育んだ土も、全て大切なものなんですね。
そうなんです。農薬や化学肥料を使い過ぎると土に残ってしまいますし、川に流れ込む恐れも…。
未来も考えて、使用には注意しています。
農薬も化学肥料も全く使わずにぶどうを栽培することは不可能ですが、病気が出やすい時期、効率よく栄養を吸収させるべき時期を把握し、樹の状態を見極めて世話をすることで、適切な量に抑えることができます。
農園の土には昆虫やミミズがたくさんいて、それを狙うカエルやモグラの棲家にもなっています。
人の手助けがなくても、土の中で豊かな生態系が出来上がっているんですよ。
-ここで育つぶどうはおいしいでしょうね!
気候・水・土はもちろん、人のチカラも重要!
農業と一口に言っても、人によって育て方は微妙に違い、出来上がるものの味も違います。知恵と技術がおいしさを左右すると言えるでしょう。
ぶどうはそれが個性として出やすい果物。
例えば、実の粒の間引き方一つで収穫時の粒の大きさや房のフォルム、味の濃さなどが大きく変わります。
僕は近くのぶどう農家で修行し、枝の剪定、肥やしの量、樹の健康状態の見極め方などを教えてもらいました。
今でも師匠にいろんな相談に乗ってもらいます。
地域での人の繋がりと、継承される文化を大切に、おいしいぶどうを作っていきたいです。
ぶどう作りは自分の農園だけでは完結せず、周辺の水路の掃除や草刈りなど地域での取り組みが欠かせません。
この地域は自治会単位で環境整備を行っています。
神様の土地で協力しながら暮らしてきた文化が根っこにあるためか、助け合いが当たり前になっていると思います。
基本的にみんな優しいですよね。厳しい人もいるけど、芯はあったかい。
なにか困ったことがあっても一人で悩まず、助け合っていける風土は農業をするのに大切だと思います。