カカオのふるさとを守り、皆の努力と魅力の中継地点に!La chocolaterie NANAIRO 西森さん
カナダのチョコレートライターに絶賛され、国内外で注目されるスペシャルなチョコレートが、島根にあることをご存じですか?
出雲市斐川町にある「La chocolaterie NANAIRO(ラ ショコラトリ ナナイロ)」はフェアトレードで仕入れたカカオ豆を使い、美味しいチョコレートを作っています。
フェアトレードとは、途上国などから適切な価格で原料や製品を仕入れること。
オーナーの西森亜矢さんに、こだわりのカカオ豆やチョコレートにかける熱い思いを聞きました。
-出雲の美しい田園風景の中に、スタイリッシュな建物!こんなところにチョコレート専門店があるなんて…店内もすごくかわいい!
ありがとうございます!
2021年の春夏コレクションは「FIKA(フィーカ)あなたと過ごすおいしい時間」をテーマに特に紅茶に合うチョコレートを作りました。
動物のイラストのものはドミニカ産のカカオ豆を使っていて、ネコはカカオ65%、ウサギは70%など配合が違い、それぞれのチョコレートに風味と物語があるんですよ。
NANAIROのチョコレートはカカオ豆の買い付けから選別、焙煎、チョコレートバーへの加工、包装まで、全ての工程を自社工房で行う Bean to Bar(ビーントゥバー)という方法で作っています。
-こだわりが詰まっているんですね!西森さんがチョコレート作りに興味を持ったのはいつ頃ですか?
子どもの頃から大好きだったんです。
でもアレルギー体質で何でも食べられるわけではなく…。
食品を選ぶときは原材料を確認していました。
そんな中でカカオと砂糖だけのチョコレートに出会い、自分で作ってみても良いかな…と思うようになりました。
-ご出身は大阪だと聞きましたが、どうして出雲でこのお店を?
実は、NANAIROの本体はデザインや映像制作を手がける大阪の会社なんです。
私は元々経理事務の仕事をしていて、地方に支店を出すことが決まり候補地の選定を任されていました。
個人的に自然や農業が好きで、自給自足の生活にも憧れもあり…西日本の各地を訪ね歩くうちに、自然や食文化が豊かで、過ごしやすい気候の出雲に魅力を感じました。
2010年に斐川町に移住し、事業の一部門としてBean to Barの企画を始め、2015年にお店をオープンしました。
今は本体の業務は大阪に集中し、出雲ではチョコレートの事業にのみ注力しています。
-カカオ豆って、外国で作られるものですよね。どうやって仕入れているんですか?
フェアトレード団体やカカオハンターを通して、主にベネズエラとドミニカの小規模農家さんから購入しています。
例えば、ベネズエラのカカオ豆は「パタネモ」という村で栽培されていて、「カカオ・シェアーズ」というフェアトレード団体を通じたルートで購入しています。
「カカオ・シェアーズ」の創設者はこの村出身のアレハンドロ・パティーノさん。彼は村のカカオ農家の発展のために日本に留学し、広島大学で学んだそうです。
私はチョコレート作りについて研究する中でお世話になった広島大学の名誉教授・佐藤清隆先生に紹介していただきました。
-そうなんですね!!カカオの産地といえば…漠然とガーナ?アフリカ?くらいに思っていました。
主な産地はアフリカ諸国です。でも大手企業が農園の土地ごと契約して独占しているので、私たちのような小規模なお店では輸入できません。
また、大規模産地ではチョコレートの大量生産のため、カカオの風味が均一になるように生産されています。
私たちのように、作り手によって異なるカカオの風味を大切にしたい店が求めるものとはちょっと違うんです。
-なるほど!西森さんはカカオの個性も大事にしているんですね!
そうなんです。ベネズエラやドミニカはカカオのふるさと。
野生種が育てられ、酸味が際立っていたり、フルーティーだったり、農園によって特徴があります。
-野生種と聞くと、なんとなくジャングルの中で育てられている様子を想像します。
取引しているカカオの木は「アグロフォレストリー」という森林農法を目指し、森の中で自然に近い状態で育てられています。
カカオは一定の大きさに育つまで日陰が必要なので、木々が繁っている環境が最適。
バナナやマンゴー、コショウといった商品作物や、農家さんが自分たちで食べる作物と一緒に育てられるという特徴もあります。
また、農薬なしで育てられるのも特徴です。オーガニックなカカオを作れるのは大きなメリット。
適正価格で持続的に売れれば、地域の経済が循環します。
-カカオが育つ環境なんて考えた事がなかったです。豊かな森と共に育てられるカカオは応援したくなります!
NANAIROさんは市場価格の2倍以上の料金でカカオ豆を仕入れているとうかがいました。
「フェアトレード(公平・公正な貿易)」として、労力に見合う適正な価格で買うことはとても大切です。
そして、農園に確実に支払いが届くルートでの継続的な取引は、村の生活を支えます。
経済的なサポートはもちろんですが、教育支援も地域の力になりますよ!
「カカオ・シェアーズ」ではクラウドファンディングで資金を集め、ベネズエラのカカオ農家さんを対象に地元の大学と協力した教育プログラムを導入する支援を始めています。
カカオの伝統的な作り方に加えて栽培や加工に関する専門的な知識を学び、求められる価値を理解して安定的に質の高いものを売れるようになれば、またカカオの価値が上がり、農家さんのモチベーションにつながるでしょう。
また、収穫量(g)より「品質重視」の売買ができる取引先が増えて収入が安定すれば、農家さんがカカオ作りを諦めず続けることができますし、適切な栽培が定着することで森も守られます。
-アフリカ諸国では、カカオ農園での児童労働が問題になっていると聞きます。私たちにできることはありますか?
カカオの産地となっている国には治安が良くない地域もあり、私も実際に農園を見に行くのは困難です。
でも、NANAIROが取引している産地は児童労働がないことを確認しています。
カカオ農家の子供たちは親御さんのお手伝いをすることもありますが、ちゃんと学校に通えているんですよ。
その一方で、様々な理由で貧しく、児童労働や教育環境の不足などの問題を抱えている地域もあります。フェアトレード団体は教育支援の活動なども行っているので、興味を持ってもらいたいです。
-地域経済や教育環境が改善できれば、貧困から抜け出せるかも。
フェアトレードは原産国の人たちをいろいろな面で支えるんですね!
そうですね。普段の買い物でもただ漠然と商品を手にするのではなく、背景を考えることが一歩になると思います。
物の値段は、安くても高くても理由があります。
労働条件や手間暇、努力を知って選んで、応援するのもいいですね!