アカエイと巡る自然の宝庫「宍道湖・中海」をもっと身近に!ゴビウスサポーター鈴木さん(2)

2019.11.29


―鈴木さんは昔から海の生き物が好きだったんですか?

 

 

僕は、兵庫県の中でも内陸の三田で育ったので海が身近になかったんです。
 

そのせいか子どものころから水族館が大好きで海に興味と憧れがあったので、大学への進学は水産系を志望していました。
 

島根は汽水湖である宍道湖と中海があり、日本海にも面しています。
志望にぴったりのフィールドがあるので、島大に決めました。



なぜ「アカエイ」の研究をしようと思ったんですか?

 

県の水産技術センターでアルバイトをしているとき、宍道湖でアカエイが増えていることを職員さんから聞きました。
 

爆発的に増えているのに、その理由も生態も分からないと…。
 

実はアカエイの研究は世界的にも少なくて、「アカエイ(の研究)にも力を入れないとね」など学会でも言われるくらい(笑)。
 

対策を打つにも研究者が少ないのが現状だと知って「面白い!それなら僕が調査しよう!」と思い立ったんです。

 




そんなに増えているんですか!?びっくりです!

はい、多いときは定置網に1日30匹もかかってしまうんです!
1軒の問屋さんで年間1~1.5トンも獲られていると聞きます。平成22年ごろから増えてきていますね。
 

実はアカエイは漁師さんから嫌われ者で他の魚やエビなどを食べてしまうし、売値が低いのでお金にならないんです。
毒のある大きなトゲを持っているのもやっかいで…。
 

刺さると1週間ぐらい腫れが引きません。
刺激しなければ大人しいですが、親水イベントなどで事故が起こったりしないか、心配になる時もあります。


 



近年、アカエイが増えていることに関して、天敵であるサメが減っていることや、地球温暖化による水温上昇などが主な原因だと僕は考えています。
 

昔は、日本海と中海がアカエイの主な生息地だったのですが、近年は宍道湖と中海が主な生息地へと変わってきています。
アカエイはもともと温暖な水域を好む生き物です。近年わずかではありますが冬場の中海湖底の水温が上昇してきています。
 

よって、本来は冬になったら温かい海に出て行っていなくなるはずが、近年は冬でも多くの個体が中海にとどまっているのではないかと考えています。
 

また、最近では、冬場でも宍道湖でアカエイが獲れることもあり、今後宍道湖でも一年中アカエイが見られるようになるかもしれません。

 



 宍道湖特産のシジミを食べてしまったり…しませんか?

 

それです!やはり漁師さんたちもそれを心配しています。
アカエイは何でも食べてしまう生き物で、アサリなどの二枚貝もよく食べます。
 

でも意外なことに、胃の内容物を調べたところシジミを食べた形跡が見られないんです。
微少なシジミ殻もありましたが、大きさからしてシジミの赤ちゃんなので誤飲程度ではないかと。
僕はシジミ漁には今のところ影響がないと考えています。
 

ただ、定置網の中で希少なモロゲエビを食べてしまうことが多く、エビ類への影響を調べていく必要があります。
 

また、アカエイは深いところに住むので、同じように底生の生き物のエサを食べ尽くしてしまう可能性もあります。

 


食用などに活用できないのでしょうか?

 

よくぞ聞いてくれました!
 

スーパーで売られているエイヒレを見た事はありますか?
一応食用にはされていますが、食べられるところが少なくて、体の半分が廃棄になってしまいます。
 

でも、宍道湖・中海のアカエイは栄養状態が良く、臭みが少ないので食べやすいんですよ。
 

実は今、唐揚げにしたり色々試しているんです。
フライにしてハンバーガーにしてみたらすごく美味しかった~!(笑)。
 

学会でも好評です!コラーゲンが豊富なので、女性をターゲットにしたご当地グルメになれるかもしれないですね。

 

ぜひ食べてみたい!!観光の目玉になるといいですね!食べる以外に活用策はありますか?

アカエイの骨格にはリン酸カルシウムが多く含まれるので、カリウム濃度が高い中海のオゴノリと合わせて有機肥料にするのも一つの活用方法だと思います。
 

また、肝臓に蓄えられている脂肪酸はサプリメントの材料として機能する可能性もあるはずです!
 

ただ、生物資源を活用するには、必ずルールが必要です。
宍道湖・中海という水域がアカエイが繁殖していける豊かな環境だということは事実。
生態を知り、ルールを作って獲り過ぎないようにして数をコントロールしなければいけません。
 

乱獲を防ぎながら、命をおいしくいただき、農業などに活用して次の命に繋いでいく方法を提案していきたいです。


アカエイから環境のこと、島根の未来のこと、いろいろ考えさせられますね

鈴木さんから見て、例えば2030年の島根はどうあってほしいですか?




宍道湖・中海という豊かな水域が、多くの人に愛されるものとしてあり続ける。そんな未来がいいですね。
 

宍道湖・中海のアカエイは近いうちに駆除が始まるでしょう。
 

でもアカエイは、世界的に見れば数が減少傾向にある「準絶滅危惧種」。
繁殖できるようになるまでは、産まれてから7~8年かかるといわれています。
 

何のルールもなく、ただ少なくするために駆除すればあっという間にいなくなります。
 

アカエイだけではありません。
生態が知られていないせいで数を減らしている生き物はたくさんいます。
世界レベルの資源の枯渇はいつかやってきます。それを考えるためには学びや調査が絶対に必要です。




私たちにもできることはありますか?

「昔の宍道湖・中海は魚もシジミもたくさん獲れて豊かだった」という話をよく耳にします。
今と環境が違っていたのもありますが、ルールがないため湖の幸が無制限に獲られていたという側面も、戦後は食糧難でたくさん漁をする必要があったという面もあるでしょう。
 

単純に昔は良かったとか、今は悪いとかいうことじゃない。
これまでの時代背景を振り返り、今とこれからを考えていかなければいけません。
 

そのためにも、身近な自然の中にどんな生き物がいて、どんなふうに暮らしているか、まず知ってもらいたいです。
 

ゴビウスで僕たちが解説しますし、自然観察のイベントなどに参加すると体験しながら学べるので、ぜひ一度来てみてください!


 

 






■鈴木さんイチ押し!今日からできる楽しいプチエコ■

身近な学習施設で学ぶ機会をもってみよう!生き物の姿や生態を知ると、ゴミ一つ捨てることにも注意が向くはず。水辺で遊ぶ時はゴミや釣り糸、ルアーなどを残さないように気をつけてほしいです。




*鈴木さんとお話した感想*

宍道湖・中海の生き物について話す鈴木さん、自然を愛し自然から学ぶことを大切にしている鈴木さんの情熱は、ゴビウスサポーターの活動を通じてたくさんの人に広がっていることでしょう。
新しい地域資源の開拓者としても、今後の活躍も注目です!
隣(写真右)は後輩の岡田さん。来年2月にはゴビウスサポーターとしてデビューの予定です。岡田さんも頑張れー!

 

 

 

   

 

 

ページトップへ