『温故知新』大切な思い出とずっと一緒に FlatStyle 松崎さん

2020.03.26


松江市の天神川沿いにある古民家。中に入ると、味のある家具やインテリアが並びます。ここで家具製作やリフォーム、空間デザインなどを行っているのが「FlatStyle(フラットスタイル)」の松崎直也さん。
信念としているのは「温故知新」。大量生産・大量廃棄の時代、物を安易に捨てることなく使い続けることの大切さを教えてもらいました。

 

 

 

-松崎さん、今、何の作業をしているんですか?



古い椅子を修理しているところです。

お客様から「思い出の家具なのでこれからも長く使いたい。今どきは新しく買い換えたほうが安いけど、愛着があって…」と託されたものです。

そんなお客様の思いをかなえるために、家具を生まれ変わらせるのが僕の仕事です。

 

 

 

 

-昔のものが蘇るなんてステキですね。子どもの頃から建築に興味があったんですか?

 


僕の家族は中学生の頃、市営住宅に住んでいたんです。
公営住宅ってどの世帯も部屋のレイアウトが変わらないんですが、ある日、同じ棟の友達の家に遊びに行くと、うちとは全く違う使い方をしていて「こんな空間の使い方があるんだ!」とその工夫にびっくりしました。



それがきっかけでインテリアというものに興味が湧いて、こんな仕事をやってみたいと、広島のデザイン専門学校のインテリアデザイン学科に進みました。

 


-卒業後はふるさとの松江で就職されたんですよね。何か目標があったんですか?

元々、松江に戻る気持ちはありました。なんでも都会に行かなければ手に入らないわけではない。
松江からでも価値あるものを発信できるはず…!という思いがあったんです。
それで最初に就職したのは松江の住宅メーカーで、営業部門で働いていました。

 

 

 

-松崎さんのスキルや提案力はそこで磨かれたんですね!

 
限られた予算の中で住宅をコーディネートするアイデア力や、お客様のお話からご要望のニュアンスを掴む力をつける機会にはなったと思います。


でも、そのうちに、やはり自分の手でオリジナルのもの、オンリーワンのものを作ってコーディネートしたいという思いが強くなっていきました。

その後、ある家具店に転職して、毎日工場で家庭用の家具や店舗用の什器(じゅうき)などの製造に携わりました。
しかし、ここも現場で技術は学べるものの、製品は大量生産で…。
木材は輸入材や合板が中心で、決まった型のものを流れ作業で作り続ける日々でした。

そういう家具は安く、軽くて使いやすいというところもあるのですが、僕が学びたかったのは、木の種類やクセなどを生かす素材重視の家具づくりでした。そこで、いよいよ一念発起して独立しました。

 

 



-古い家具のリフォームはどのように学んだんですか?

起業するため、工務店のアルバイトで古民家の解体・引っ越しに関わっていたときに、古い家具の分解や修理などを通じて構造の勉強をしました。明治から大正時代頃の家具は、今の大量生産品と違う魅力があるんです。
それが捨てられていくのが「もったいない!」といつも思っていました。

 

 

-昔と今、どう違うんですか?


まず素材が違います。合板ではなく「木(ぼく)」を使っています。

昔は機械が少なくて一つ一つの仕事が手作業でした。

木しか素材がなくて、鉄も貴重だったので釘を使わないで組み立てる“組み木”といった高度な技術が散りばめられ、職人のクセやこだわりが見えてきます。

 

 

こだわりは、外観よりも内部に見られることが多いです。
例えば和箪笥は、引き出しを抜いたところにある棚板(たないた)の有無、内側の化粧仕上げなど、職人によって手の込み方が違います。

 

それぞれ個性があるんです。それが画一的な大量生産と大きく異なる点です。
今の大量生産品は、作り手の技や顔が見えないので愛着がわきにくい。だから使えなくなると「捨ててしまえばいいや、また次を買おう」となりがちで、僕はいつもそこにジレンマがありました。

 

 

-物が大切にされない現代…本当にもったいないですよね!


最近はDIYブームですが、家具づくりを経験した人が古い家具の構造を見たら、いかに難易度が高いか分かるでしょう。それが分かれば家具をないがしろになんかできないはずです。
合板の流通が始まったのが昭和初期ですが、それ以前の家具はだいたい良い木を使っているので、状態にもよりますが、少し直せば使えるものが多いんですよ。

 

 

-FlatStyleをオープンしたのは2005年。今でこそアンティークのインテリアは人気がありますが、その頃はまだちょっと早かったのでは?


はい、「なんでこんなものを売っているの?」なんて言われたこともありました。古い家具の良さを分かってもらうために、空間コーディネートから提案する方式を取ろうと作ったのが今の工房です。

今はアンティークが流行っていて、あえて〝アンティーク風〟に作られているものも人気ですよね。
FlatStyleに置いてあるのは本当のアンティークです(笑)。

 

 

 

-最初はどんな人が興味を持ってくれましたか?


若者よりも40代以上、中高年の方が多かったです。
心に残っているのが、90代の女性からの依頼。若い頃はお金がなくて、旦那さんと一緒に苦労して買ったダイニングセットの椅子が壊れてしまったということで、修繕をすることになりました。

直したものをお届けしたら、とても喜んでくださって、旦那さんの仏壇に手を合わせて涙をこぼしていらっしゃいました。

 

 

80代の女性から仏壇づくりを依頼されたこともあります。亡くなった旦那さんは彫刻が趣味で、素材の板がたくさん残されていたので、活用して作らせてもらいました。

 

 

 

-長い人生を共に歩いた人との時間や思い出が詰まった品を、ずっとそばに置いておけるのは幸せですね。


「住まいや家具などから思い出の品を作って残したい」というオーダーもあります。

3姉妹のお客様からは、おばあちゃんの家にあった桜の木が枯れてしまったで、何か残るものが作りたいとのことでした。

そこで、その桜の木の幹や枝から、照明、フック、写真たてなどを作らせてもらいました。

 

 

幼いお子さんを亡くされた親御さんからは、お子さんがおもちゃをしまって大事に使っていた和箪笥を託されました。
捨てられないがそのままの形で置いていくわけにもいかないということで、解体し仏壇に作り替えました。

 

 

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