今が最後のチャンス。持続可能な地域と「自分らしい豊かさ」を見直す 島根県立大学 豊田先生

2021.03.12

 

地球温暖化やゴミ問題など、課題が山積みの2020年代。
 

地球全体の問題に、私たち一人一人がどう関わっていけばいいのでしょうか。
 

ヒントは「地域」にあるといわれています。島根県立大学 総合政策学部の豊田知世(とよた ともよ)先生にお話を伺いました。

 

 

-海が見える素敵なキャンパスですね。
豊田先生は島根県立大学の第一期生だとうかがいました!


そうなんです。生まれは岡山県の緑豊かな町、高梁市(たかはしし)です。
高校までふるさとで過ごし、島根県立大学に一期生として入学しました。
 

在学中は開発経済学を学んでいて、その後広島大学の大学院でアジアの環境問題を、京都の総合地球環境学研究所で水問題などを研究しました。
 

その後のJICA(ジャイカ)の研究所では気候変動の問題や、日本の援助が開発途上国の環境問題改善にどのようにわたっているのかを調べたりしていました。
 

そして、2012年から母校であるこの大学に戻り、地域政策学部で地域資源を活用したエネルギーやSDGsなどについて教えています。

 

 

先生が環境問題について興味を持ったきっかけを教えてください。

 

以前は途上国の貧困問題の解決を重要視していました。 


でも、多くの国は経済が発展して豊かになると同時に、環境問題が発生して、貧しかった時よりも人の命に関わるような悪い状況になっているんですよ。

 

 
環境が壊れると生活も壊れてしまうんですね…。そこに目を向けたことがありませんでした。


一口に「貧しさ」と言っても必ずしも悪いとは限らなくて、お金がなくても豊かに暮らしている人はいます。
 

でも、環境問題はどれも深刻で、地球という資源は一つしかない…そういった気づきから環境に関する研究に取り組むようになりました。

 

 

今はどんな研究をされていますか?

 

これからの時代は、地域の中で資源を賄っていくことが重要です。
 

どうやったらその土地でモノやエネルギーなどを循環させ経済を回していけるのか、地域資源の活かし方を研究しています。

 


モノやエネルギーの問題は地球全体のことだと思っていました。なぜ地域で資源を回していかないといけないんですか?



地球温暖化の原因になる二酸化炭素などを出さない「脱炭素社会」の実現に向けて、石油や石炭といった化石燃料をいかに使わないようにしていくかが大きな課題になっています。
 

例えば、島根のような地方は車社会でガソリンの使用をすぐに止めるのは難しいですよね。
 

でも、地域で使うエネルギーを地域で賄ったり、出してしまった二酸化炭素を森林に吸収させたりすることで、状況を変えられます。
 

また、日本は少子化が問題ですが世界では人口が増大し、すでに綺麗な空気や水を含む資源の奪い合いが始まっています。
 

そんな中で日本は食料自給率が38%と低く輸入に依存している。
建材やバイオマス発電に使われる木材も同様で、間接的に他の国の資源を奪っていると言えます。

 


他の国から資源を奪っている…考えたこともありませんでした!

 

生活の背景に何があるのか、なかなか見えにくいですよね。
 

ファストファッションの服がなぜ安いかわかりますか?

 


値段や品質ばかり気にして、考えたことがなかった…


理由の一つが、労働力を安く調達できる国で作られているからです。
 

その国で悲惨な労働環境を生み出したり、染色などの過程で深刻な水質汚染を引き起こしていることが指摘されています。
 

他にも、牛肉が作られる裏で、飼料の畑を広げるために熱帯森林が破壊されている。
 

エネルギーについても、化石燃料を採掘している地域には環境負荷があり、環境汚染が原因の健康被害で多くの人が亡くなっている。 

 

SDGsの17の目標を見たとき、日本はどれをクリアしているか…だけではなく「世界がSDGsの目標を達成するために、日本はどんな役割を果たせるか」も考えることができると思います。

 

 

確かに!視野が日本から世界に広がります!

学生さんとの取り組みについて教えてください。



「地元学」という、学生と地元住民の方々と一緒に地域を歩き、その地域の資源を見つけ、まちづくりに活かすフィールドワークをしています。
 

2021年の春からは、地元で有機農業のプロジェクトがスタート。
 

学生と地域の人が一緒に耕作放棄地を開墾し、付加価値のある有機栽培の作物に挑戦したり、道の駅の活用する方法を考えたり、さまざまな取り組みをしています。

 

 
「地元学」!面白そう!

学生と地元の人と一緒に地域を回るんですよ。
地元の人には当たり前のモノや文化が学生の目には貴重で面白いものに映り、新しい発見があります。
 

昔ながらの瓦屋根の風景を、住民は「古臭い」と思っていたのに、学生は「オシャレ」と感じたり。外からの視点ってすごく大事なんですよね。

 

 

例えば、最近人気のインフラツーリズム。
 

地元では日常の一部であるダムや橋や発電所などが注目され、地域外から人を呼び込んでいます。
 

新しい視点から掘り起こされる観光スポットは、大いに活用できる地域資源なんです。

 

 

 

 

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