ここが日本の最先端!みんなでつくる、持続可能なふるさとの暮らし えーひだカンパニー株式会社 野尻さん

2022.02.24

 

日本の各地で加速している過疎と高齢化。
農業の担い手不足や、交通系インフラの減少、人と関われる場所の消滅、空き家の増加…。
 

課題が山積する中、安来市の比田地区にある「えーひだカンパニー株式会社」が行う、皆の夢を叶えながら自立した持続可能な地域を目指す取り組みが、いま県内外で注目されています。
取締役の野尻ちさとさんにお話を聞きました。

 

 

-のどかな緑や畑が広がる中に、かわいい直売所!なんだかほっこりしますね。
野菜やお花、お酒、ドレッシングなどいろいろなものがあって。いい匂いが漂ってきましたが、もしかしてパンも? 

 

 

そう、地元の米粉を使ったパンです!

直売所「え~ひだ市場」の隣にえーひだカンパニーの事務所があり、そこの厨房で焼いています。毎週予約してくださる方もいるんですよ。

 

 

比田育ちの食材を使った加工品は他にもあります。
例えばこのニンジンとタマネギたっぷりの「手作り野菜ドレッシング」は、野菜嫌いのお子さんのためにお母さんがつくったもの。
 

彩りよく美味しくて人気ですし、規格外の野菜を活用しているのでフードロス削減にもなります。
 

地元の人のアイデアでいろんなものを作っているんですよ。

 

 

-おいしそうなものばかりでワクワクします!「えーひだカンパニー」はいつから活動しているんですか

 



2017年3月に設立しました。
 

この地域は人口減少と高齢化が進んでいます。ふるさとでの暮らしや農業を諦めず、何年先も「今日もえ~ひだ(良い日だ・比田)」となるためには、行政に頼り切らない持続可能な地域づくりを進めていかなければいけません。 

 

 

そこで、住民によるプロジェクトチームを結成し、みんなで88の地域ビジョンを考えました。
高齢者の見守りや暮らしのサポート、デマンド交通の導入、農業を継続するための仕組みづくり、農産品のブランド化、地域の内外から賑わいを呼び込むイベント、子育てサポート、婚活応援、空き家の活用…幅広い内容で課題や要望が出てきました。 


「比田検定」を作るとか「サフランやラベンダーの花畑」などの夢も含めて、この実現のためにできたのが「えーひだカンパニー」なんです。

 

 

-農業から婚活まで、幅広いですね。ボランティアグループでもNPOでもなく、株式会社なのはどうしてですか?

 



 この地域には同じような志を持った任意団体もあったのですが、中心になっていた方たちが高齢になるのに伴ってなかなか活動できなくなり…取り組みを次世代につないでいくには、いろいろな人が関わり、収益を上げ、仕事も経済も循環させる仕組みを作る方が良いと考えたんです。
 

その手段として法人化を選びました。株主は地域の方が中心で、比田での買い物や食事、散髪、給油などに使える券を株主優待としてお配りしています。地域外に住む株主もいらっしゃいますよ。

 

 

-なるほど!ここに住んでいなくても、「応援したい」という気持ちがあれば株主として関われるんだ!「*関係人口」が増えて地域の力になりますね。
えーひだカンパニーではどんなことをしているんですか?作業服のスタッフさんもいるようですが…? 

*その地域の外から多様な形で地域づくりなどに関わる人たちのこと

 

 

簡単に言うと、農業で地域を支えながら収益を上げ、その収益を使って福祉や地域の暮らしを支える〝助け合い〟を広げています。 
 

この地域には、高齢になり「農地はあるけど自分だけでは大変、でもまだやめたくない」「少し手伝ってもらえたら続けられる」という人が多いんです。
 

えーひだカンパニーでは、農薬や肥料の散布といった負担が大きい作業を「作業受託」という形で請け負って仕事にしています。
 

これまで地区外の業者に作業を頼んでいた農家さんもいましたが、私たちが仕事にすることで気軽に依頼でき、地域内でお金が回るようにもなります。  

 

 

-農業を続けられる上に、地元で経済が回るんですね。すごい!

 



集落単位で請け負うこともあるので、限られた人数で効率よく作業ができるよう、農薬をまくドローンや草刈りロボットなども導入しています。  
 

新しいスタイルを地域に定着させることで持続可能な農業のカタチが見えてくるそんな未来も見据えて、これからは求められる作業が種類も量も増えるはず。
 

いずれは田畑の総合的な管理まで請け負えるよう、体制を整えていこうとしています。 

 

 

-加工品の開発も持続可能な農業のためですか?

 

 

  えーひだカンパニーを立ち上げるときに作った88の地域ビジョンには「比田産品ブランド化」があり、その目標の実現のためでもあります。
 

ドレッシングなどの加工品の開発だけでなく、地域発のいいものをもっと発信していきたいですね。  

 

 

例えばお米。近隣の有名な産地に負けないぐらいおいしいお米がとれるので、何とかしてPRしてもっと知ってもらいたい!
 

酒米の新品種「緑の舞」からつくられた純米吟醸酒「たたらの風」もすごく美味しいですよ!

 

 

-目標が形になっていくと、スタッフさんもやりがいがありそうです。どんな人たちが働いているんですか?

 

 現在、会社の職員・パートは8名、事業に携わるメンバーのほとんどが、農業や自営業、会社員などの本業を持っている「地元の人」。
 

本業を大切にしながら、農業の作業受託や商品開発、地域の福祉の取り組みなどに自分にできる範囲で携わっています。 

 

 

-最近よく聞くパラレルワークのような感じでしょうか?  

 

 

そうかもしれません。それぞれの本業を圧迫しない範囲でえーひだカンパニーに関わりつつ、プラスの収入も少しあるという形。


無理せずやりがいを持って地域づくりに取り組むスタイルが、活動を持続可能なものにすると思います。
 メンバーが楽しそうでないと、次の世代や地域の外の人から見てポジティブに感じられませんしね。


これからはもっと分担を細分化して、この地域に住むいろいろな人が少しずつでも関わり、やりがいを感じられるような仕組みをつくりたいです。 

 

 

-とても大切ですね!無償の貢献に頼りすぎないスタイルだと、みんなで長く続けられそう!福祉の取り組みもあるんですね。


私たちだけで取り組むのではなく、比田の協議会や交流センターなどが行う「小さな拠点づくり」の活動と連携するスタイルです。 

デマンド交通の運営や、高齢の方の見守り、ハザードマップづくり、買い物支援、お茶会や食事会といった交流イベントなど、多様な取り組みを進めています。

 

 

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