ここが日本の最先端!みんなでつくる、持続可能なふるさとの暮らし えーひだカンパニー株式会社 野尻さん(2)
-「デマンド交通」ってどんなものですか?
比田にはバス路線がありますが、そもそも家からバス停までが遠く、アクセスが難しい方が多いです。
デマンド交通は公共交通機関と組み合わせて目的地に行けるシステム。
利用したい方が前日までに予約をすると、車が自宅から指定のバス停までを結びます。
持続可能なシステムにするため、令和3年4月から地域内の金融機関や買い物の送迎を始め、利用者から1回300円の利用料をいただいています。
地域内でドライバーさんを確保し、近隣のタクシー業者さんとも連携しながら展開。
高齢者だけでなく、車が運転できない人、学校に通う小中学生など、いろいろな人が使っていますよ。
交流センターのイベントでも送迎を行い、地域のつながりを途切れさせないようにしています。例え運転免許証を返納しても、行きたい場所に行けるのは大切ですよね。
運営資金の大半は安来市の助成金で、地域で主体的に行っている事業をバックアップしてくださっています。
-比田のような取り組みが必要な地域は日本中にありますもんね。というか、このまま人口減少が続いたら、いずれ日本中が比田のようになるはず…。
そうかもしれません。いろいろな市町村から視察に来られることが多いんです。
準備が早ければ早いほどできることは増えるので、参考になればと思います。
-地域の福祉にも繋がり、輸送時のCO₂排出が少ない地産地消はいま注目の「エシカル消費」ですし、デマンド交通の整備は地域の「脱炭素」にも繋がると言われていますよね!
実際、ここで利用している人たちはそこまでの実感はないと思いますが、回り回って脱炭素につながっていくといいですね。
元々この地域の人たちは、必要なものは買うのではなく自分で作ったり、手持ちの環境でなんとかしてしまうことが多いんです。
工夫、知恵、助け合いでの関係…地域全体でサバイバル力あってすごいんですよ!しかも、それが当たり前になっているんです。
-なるほど。特に都会の人が「やろう!」と思って取り組む「丁寧な暮らし」を、比田ではずっとやっているんですね。日本の最先端という見方もできます!
私のような移住者は、環境を大切にし、石油資源に頼らず、そこにあるものを大切にして暮らしたいと思って地方にやって来ることが多いです。
外から来た者には、地方の〝当たり前〟が素敵なモノ、ありがたいモノに感じられる。住民にはその感覚こそが新しく感じられ、発見がある。
双方の価値観が溶け合っていい方向に進んでいくといいなと思います。
-野尻さんも移住者なんですか?
はい、京都の出身です。地域おこし協力隊として移住しました。
最初は農業をやるつもりでしたが、協力隊のミッションだったえーひだカンパニーのプロジェクトの比重が高くなっていって…。
でも、活動の中で地域の人と仲良くなれたので良かったです。今はえーひだの事業と並行して無農薬のレンコン栽培をしているんですが、懇意になった農家さんに農地を紹介してもらったんですよ。
農業について教わることも多いです。
-働きながらレンコン栽培…いわゆる「半農半X」ですね。無農薬だなんて、こだわりがあるんですね。
そこまで思想が強いわけではなく、農業はいろんな考え方があると思っています。
農業を志していろんな土地を見ていた時、岡山で無農薬のレンコンを栽培している人に出会って、「これだ!」と。
他の野菜に比べたら虫の食害は少ないようです。葉っぱをかじられることもありますが、多少食べられてもいいや!ぐらいの気持ちでいます。
松江市のスーパーや最寄りの産直コーナーなどで販売、最近はレンコン掘り体験に来られる方も増えているんですよ。これからいろんな人に知ってもらいたいです。
-これからはどんな取り組みをしていきたいですか?
地域は〝人〟が全て。定住促進力を入れていきたいです。
移住する人が増えれば、比田で行っている様々な取り組みがもっと活発に成るはず!高齢化で農業の形が危ぶまれるので、雇用の仕組みも整えていきたいです。
みんなが楽しく働いて快適に暮らして行ける、自立した地域を目指して頑張っていきたいです!
*野尻さんオススメのプチエコ*
毎日の買い物の中で、地元や近隣地域の農産物や加工品に興味を持ってみてください。作り手のファンになってほしいです。 そして、ぜひ産地の直売所などに行ってみてください。
ちょくちょく通うのが難しい場合は、SNSなどをチェックして、イベントやお祭りのときにでも遊びに来てくれると嬉しい!
持続可能な地域づくりをしているエリアに買い物やイベントで関わると、活動の応援になります。
*野尻さんとお話した感想*
楽しく無理なく、みんなで地域を元気にしている野尻さんたちの姿勢に目からウロコでした。同じような取り組みが、島根全域に、日本中に広がるといいですね。そこに住んでいない人も、産品を買うことでサポートできるって素敵!皆さんも生産者や産地など〝推し〟を見つけておいしく応援しましょう。
(※取材に伺ったのは、比田の青空が温かい2021年初秋。撮影時のみマスクを外していただきました)
ぜひご協力ください★
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