豊かさ芽吹く種のお店 俵種苗店SHIKINOKA 俵さん

2022.03.31

 

 

豊かな自然に包まれ、歴史と文化が息づく津和野町。
白壁と石畳が美しい殿町通りに、約150年間町を見守る「俵種苗店 SHIKINOKA(タワラシュビョウテン シキノカ)」があります。

 

明治時代から農機具・種苗店として町の仕事や暮らしを支え、趣ある看板や土間、揚戸(あげど)を備える店舗は、津和野の伝統的な町家を伝える建造物として国の有形文化財にも登録されています。

ここで、新たな時代の価値観と共にお店を継承した俵志保さんに、一つ一つに「ストーリー」がある商品や、県内でも珍しい量(はか)り売りについてお話を伺いました。

 

 

-津和野の風情ある街並みにぴったりの建物ですね。それでいてディスプレイはまるでヨーロッパのアンティークショップのような。とっても素敵です!

 

 

ありがとうございます。「俵種苗店SHIKINOKA」は、昔から扱う野菜の種や苗をはじめ、生活雑貨や手仕事の工芸品などを取り扱う暮らしのセレクトショップです。
 

私がお店を継いだのを機会に、プロダクトブランド「SHIKINOKA-シキノカ-」を立ち上げ、暮らしの中でいつもそばに置いておきたいものや道具、身に着けて心地よいもの、環境に配慮したアップサイクルな製品などの取り扱いを始めました。

 

 

-いつ頃からここで種苗店を営まれているのでしょうか?

 

 

明治前期から農機具・種苗店として地域の方の仕事や暮らしに寄り添った商売を続けてきました。
 

時期になると種や苗を近郊の農家さんに売り歩いたり、求めに応じて農機具や農業用の資材などを扱う、まるで小さなホームセンターのような存在だったそうです。

 

 


看板や外観は当時のままに、店内は改装していますが、床(土間)がちょっとデコボコしていたりします。
これは昔、資材を積んだ手押し車や農機が通った跡なんです。

 

 

 

創業から約150年という歴史の中で、私たちの生活も変化して様々な価値観が出てきました。
そんな中でどう社会や地域と関わろうか。サスティナブルで丁寧な暮らしを一緒に考える場所でありたいと思っています。

 

 

地域の歴史あるお店が、時代の変化と共に新たな役割を担っているんですね!
商品の中には、職人さんと一緒にデザインから立ち上げたものがあると聞きました。

 

プロダクトブランド「シキノカ」は、エシカルな暮らしを提案しながら、自然と寄り添い培われた伝統、職人の極みを新たなカタチで継ぎ伝えたいと立ち上げたものです。
 

特に石見の職人さんを訪ねて想いを聞き、私もこれを未来に残したい!と共感したものはオリジナル商品を共同開発させてもらっています。

 

 

人気の器は、江津市にある「宮内窯(みやうちがま)」さんとコラボレーションした「イワミイロ」というシリーズ。
 

この地方の焼き物は「石見焼(いわみやき)」と言われ、古くから「はんどう」と呼ばれる大きな水かめや蓋付きの壺など大型の日常品を作られていました。
 

宮内さんのお人柄とシンプルな作風に惚れ込み、ぜひ一緒に食卓を彩るものづくりがしたいと思いカタチになったものです。

 

 

温もりある木の器は、益田市匹見町に工房がある「ひきみ森の器工芸組合」の大谷さんと一緒にデザインを起こした作品。
 

匹見の広葉樹林の間伐材を利用し、木工ろくろの技術で作られています。
 

いま、木工ろくろをされる職人さんが減っており、技術の継承が難しくなっているとのこと。
森の循環にも関わる素敵な作品なので、このお店から少しでも多くの方に知ってもらえれば嬉しいです。

 

 

私が染めたお茶染めのストールは、津和野町の「まめ茶の秀翠園」さんの製造工程で出る一級品にならない部分の茶葉と、媒染の原料に大田市の鉄工所「株式会社篠原メタル工房」さんの廃棄する鉄粉を使わせていただきました。
 

表に出る機会がなかった素材を活かしながら、新たな価値を生み出すアップサイクルな商品となっています。

 

 

-すごい!地域の伝統や資源を活かすなど、背景に豊かな「ストーリー」があります。知っているのと、知らないのでは全然違いますね。

 

 

私も作品の背景を知っているのでお客さんにもおすすめしやすいですね。
 

お店では、成分としても体に良いもの、無駄がなく環境にもいいもの、作る人にとっても、買う人や地域にとっても心地いいものを届けていきたいと思っています。

 

 

-商品をほしいだけ入れる「量り売り」も体験できると伺いました!

 

 

豆類・スパイス・天然洗剤は好きなものを必要な分だけ量って買えるようになっています。
 

ちょっと凝ったお料理に挑戦したり、お家でチャイやポップコーンを作ったりと楽しめますよ! 

 

 

グラムで買うことができるので、余らせてしまうことがなく、フードロスが防げます。
 

また、ご自宅から容器や瓶を持ってこられれば包装ごみも出ません。

 

 

お店にも空容器の用意がありますが、観光でこられた方が手に持っているペットボトルのお水を飲みきって「これに洗剤詰めるよ!」と言われたり(笑)。 
 

近所のリピーターさんも増えてきましたね。
 

「量り売り」と聞くと、新しい売り方のように感じますが、もともと種は「種箱」を重ねて背負って歩き、升(ます)で量って売っていました。
 

古き良き文化に立ち返った感じです。

 

 

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