サステナブルな価値と共に、進化し続ける伝統 舟木木工所 野尻さん、舟木代表(2)

2022.03.23

 

-そうやって触れていると、木を使ったものづくりにも興味がわきそうです
未来を担う子どもたちにはたくさん木に触れて欲しいです!



 

加茂小学校にものづくり体験で訪問したことがあります。
繊細な組子を作る舟木さんのワザに驚いて、夢中になるお子さんが多いんですよ。
 

機械も多少使いますが、ほとんどの工程は職人の手によるもの。
技術と長年の勘が活かされます。心惹かれる気持ち、すごく分かります。 

 

 

最近は新型コロナウイルスの影響で難しくなりましたが、小学校の社会見学を受け入れています。
 

建具をじーっと見つめる子、組子のキットを小刀で整える作業に見入る子、舟木さんが用意した木の教材を触って「種類によって重さが違う!」とびっくりする子…。
 

いろんな反応があって、驚きから学んでくれている実感がありました。
 

ものづくりを通して、伝統の技術・知識の素晴らしさとともに、自然界での木の役割や、林業による資源の循環など、いろいろなことを伝えていきたいです。

 

 

-野尻さんは昔から職人のお仕事に興味があったんですか?

 



子どもの頃から木や葉っぱで遊ぶのが好きで、実を潰して色水を作ったり。
ものづくりもずっと好きでしたが、本格的に工芸を学んだことはありませんでした。
 

40歳ぐらいまでは子ども服の店に勤めていました。
洋服と一緒に木のおもちゃなども取り扱っていて、お客さんや自分の子どもが自然に興味を持つきっかけがあると良いな…という思いはずっとあって。
 

そんな時、島根県のWEBサイトで組子細工の職人育成事業を知り、「これだ!」と思い切って飛び込んでみました。

 


-フットワークが軽い!

 



20代の頃にワーキングホリデーでニュージーランドに滞在したことで、行動力が養われました。
 

自然と共生する暮らしを体験したのも大きかったかもしれません。年齢を理由に諦めたくないという気持ちもあります。

 

 

-ニュージーランドは自然保護に力を入れていると聞きます。新鮮に感じたことはありますか?

 

 

特に水資源を大切にされていて、シャワーは極力5分以内。食器用洗剤は人体に入っても害がないものが使われ、洗う時は泡をすすがなくても問題ないので、水が節約でき、川や海を汚しません。
 

また、滞在先が農場だったので、生きものの命を食べる意味を考えさせられました。
農場には豚がいて、かわいいので名前を付けたくなったんですが、ホストファミリーが「豚は食べ物だから、絶対ダメ」と…。
 

その後、捌いて肉にするところまで体験しました。学んだことはとても大きいと思います。

 

 

-自然と共に暮らす、いただいた命を無駄なく使わせてもらう…なんだか組子細工に通じるものを感じます。

 

そうかもしれません。きっと今の私の原点です。

 

-そういう思いがある野尻さんだから、伝えられることもあるかもしれませんね。
舟木さんは、野尻さんたち若い職人にどんな未来を期待していますか?

 

 

 

舟木さん

自然を生かす職人になってほしいです。
 

しっかり使ってやれば木も喜ぶでしょう。固定概念にとらわれず、基礎があるうえでその時代に合ってこそ「伝統」。未来に繋いでいってほしいです。
 

そのためには、技術は惜しみなく教えます。
 

中には教えを渋る職人もいますが、自分の時間や手間を惜しみ、目先の利益にとらわれてはいけません。
その業界の発展を想い、自分が居なくなった後を考え次世代に技術を授けるべきでしょう。

 

 

物作りは楽しい。私も楽しんでいますが、その一方で、終わらない問答を続けるようなものだとも思います。きっと死ぬまで分からないことだらけでしょう。今でも日々発見と挑戦ですよ。

スタッフが提案するアクセサリーなどのデザインもそうです。彼らが着目する新たな「木の可能性」に飽くことがありません。大きい作品も、小さな作品も全て木への挑戦なのです。
 

いいものを作れば売れるはず。できたものが答えてくれるはずです。

 

 

-これからどんな時代になっていってほしいですか?

 

 

舟木さん

木や草や土など自然由来のモノは、プラスチックのような化学的に作った物質と違って自然の中で分解され、そこで芽吹き、育ち、再びモノや資源になる。
燃やせばエネルギーも生まれる。そんなサイクルを見直すべき時代がきています。
 

日本は国土の約7割が山林。共生し活用していく方法を一人一人が考えていってほしいですね。
コロナ禍をきっかけに暮らし方を省みる人が増え、循環型の社会を見直す時期がやってきていると感じます。
 

新しい物ばかり追わずに、ある物を使う、生かす、汚れたものきれいにしてまた使う。そういった価値観が広がればいいですね。

 

 

-島根の子どもたちには、どんな想いがありますか?

 

 

舟木さん

学校などで組子細工を通した「木育」を続けています。
木材に触ってもらって、匂ったり、場合によっては噛んでもらったり、五感を使って木というものを学んでもらい、木の種類や見分け方なども伝えています。
 

そして、木から紙など色々なものができること、雨を山が蓄えて、浄化し、川に流れ、海の生き物を育てることなども伝えています。
 

小さい頃からいろいろなことに興味を持ってもらいたいんですよ。
今は選択肢が多い時代ですが、好きな分野を見つけ、力を入れて、向上させて、のびのび生きていってほしいです。

 


-野尻さんはどうですか?

 

 

野尻さん

職人としては、使ってワクワクできるモノを作りたい。子どもから大人まで、人を笑顔にするものづくりが理想です。
 

島根という土地には、ずっと自然が豊かであってほしいと願っています。そこで育つ子供達には、木など自然に触れながら育ってほしい。そして、個性を持った大人になってもらいたい。
 

自分の得意なことや夢を諦めず、失敗を恐れずにチャレンジを続けてほしい。
好きなことをがんばっていると自然と笑顔になれるはず。仲間と力を合わせてよい社会を作ってほしいです。組子細工のように!

 

 

 

 

 

*野尻さんオススメのプチエコ*

誰かへの贈り物や、自分の心を豊かにするものがほしいとき、地域の「木」や「伝統工芸」をキーワードに探してみてください。自然の循環や伝統の技術を守る一歩になります。

 

*舟木さん・野尻さんとお話した感想*

自然の中から頂いた木の命、伝統の技、若い人の感性、ふるさとの子どもたちへの思い…。さまざまなものを組み合わせ、美しい組子細工のように未来へつなげていく。そんな伝統工芸が島根県にあることが誇らしいです。
今回の取材で伝統工芸の新たな魅力を知る事ができ、これからも挑戦を続ける工房の皆さんを応援しています!

 

(※写真撮影時のみ、マスクを外していただきました)

 

 

 

     

 

 


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