大地の恵みが花開く、豊かな島根でできること 島根大学 松本一郎教授(2)

2020.03.31

子どもは学校などで郷土について学ぶ機会がありますが、大人には無い気がしますどうしたらいいんでしょうか?


とんでもない!大人は「学び直し」や自然体験などを通した「感じ直し」ができるんですよ。

いろいろな分野にアンテナを張って、イベントや講座に参加してみるといいでしょう。学芸員さんなどの専門家とフィールドワークをする機会があればぜひ参加してみてください。
街を歩いたり、川をさかのぼったりしながら体感できます。

(*主な取材日は2019年10月です)

 

 


特別なイベントや講習に参加しなくても学べる機会は沢山あります。

仕事や子育てに忙しい人にとっても、この「学び直し」「感じ直し」は日々の活力になります。

休日のレジャーとして博物館や科学館などを訪れたり、山や川に出掛けるのもいいでしょう。


いつも車で通る道を、休みの日に時間をかけて歩いて、景色を眺めるだけでも新鮮な体験ができますよ。「ここにはなぜ段差があるのかな?」「この神社の狛犬の石はどこで採れたのかな?」と身近な〝謎〟を探してみると、驚きと感動に出会えるでしょう。

 

 

 

 

体験や学びが、環境教育にも繋がるんですね!

先生はあの「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」の目標設定にも関わられたと聞きました。世界的に注目される国際目標の立ち上げに、島根の人が携わっていたなんで驚きです!

 

SDGs*(1)は、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成された国際目標です。

フランスにあるユネスコのESD*(2)セクションが、加盟国のNPO、NGO、大学など多様な組織と協力して作り上げました。

 

 

私は以前から学生にESD関連施設を見学させるなど、教育面でユネスコと関わりがありました。政府機関の代表とは異なる、一人の研究者としてSDGsの項目について意見を出していました。ESD関連の草案の翻訳など、日本へ伝える活動にも携わっています。

 

*(1) SDGs:Sustainable Development Goals 「持続可能な開発目標」

*(2) ESD:Education for Sustainable Developmentの「持続可能な開発のための教育」

 

 

 私たちはSDGsをどのように考えればいいのでしょうか?

 
SDGsは、「誰1人として取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会をつくるためのもので、17の項目には環境問題だけでなくジェンダー(社会的・文化的に形成される男女の差異)や平和に関するものもあります。

どれか一つでも欠けてはいけない、17個が揃って初めて持続可能な社会になるという考えのもとにあります。

 

「自然を守るために原始時代の生活に戻れ」と言っているわけではないんですよ。
自然とともに、科学技術を使って発展した人間の営みも持続していくことを目指しています。

いかに自然に負荷をかけないように発展していくか。これがポイントです!

 

 

 

あたたかそうな食べ物の器、手をつないでいる人々、水の中の魚、町並みなど、親しみのわくアイコン(図形・記号)ばかりですね。これはどういうことですか?

SDGsの17の項目は、生活の全てに繋がっているということです。
自分の暮らしをSDGsに照らし合わせ、今、していることがどのアイコンに当てはまるかを考えてみると面白いですよ!

例えば、食事をするときに2番の「飢餓(きが)をゼロに」を、また、地域活動で11番の「住み続けられるまちづくりを」を考えてみるとか。
これまで別々だった自分の活動が持続可能性と繋がっていることが実感できるはずです。意識も変わるでしょう。

 

日本の街は他の国にくらべゴミが目立たず、松江はその中でも街がきれいだと言われていますが、「ゴミがない・ある」という状態の捉え方も変わってくるはずです。


 

 

連想ゲームみたいですね!

 

そう、ゲーム感覚で繋げていくといいですね!例えば電気をこまめに消すだけでなく、スイッチの先に何があるのか?電気を消すのは7番のエネルギーの項目に当てはまり、さらにエネルギーは13番の気候変動にも関わることが見えてきます。

 

「エコビジネス」という言葉もありますが、CO2を出さない方法で発電された電気を使う、燃料電池や水素エネルギーなどの自動車を買うといった選択が可能な時代になりつつあります。

SDGsの達成は一人の人間だけが努力するものではなく、全ての人が協力しあって成し遂げるもの。

項目の17番は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。一人一人ができることを持ち寄れば、持続可能性・社会が創出できるのです。

 

 

 

 

 

―2030年、島根県はどんな地域になるべきでしょうか?


2020年の今年からSDGsの年限(2030年)まであと10年しかないです。
私たちはある程度の成果を見出す必要があります。


島根県は17項目の達成だけでなく、地域のあり方をアジェンダ(予定表)に照らし合わせ、2030年時点にどうなっている必要があるか考えるべきでしょう。

 


キーワードは「都会も大事だけど、地方も大事」だと思います。

都会は、生産と情報の発信地。地方は、人間が自然の一部であると実感でき、共生を学べる地。
島根県は、人間の生活や文化と生態系が融合している理想的な土地です。

 

八百万(やおよろず)の神が自然に宿り、日本人の心を深く感じとれる。
日本を代表する「自然との共存・共栄を学ぶ場」になるべきだと私は思います。

 

 

ーそうなるためにはどうしたらいいでしょうか?

 

出雲大社や石見銀山といった名所は誰でも知っています。
観光地としてPRするだけでなく、歴史的な視点、科学的な視点など、多様な見方を提案し、新しい豊かさを提供する取り組みが必要となるでしょう。

そのヒントは「楽しさ」「美しさ」。島根県は自然が豊かで、その恵みが歴史的にも文化的にも花開いているところで、「楽しさ」「美しさ」を感じる心を育てるのに最適な場所なんです。

 

自然の中でワクワクしながら学べるところは、今や都会にはほとんどありません。

 

自然、産業、経済、などが学べるそれぞれの得意分野を各地が持ち寄って、日本全体でピースを組み立てるなら、この山陰は地球の美しさ・素晴らしさを学び、知ることができる貴重な場所だと考えます。


そんな素敵な教育ができると、持続可能な未来が必ず見えてくると信じます。そんな地域での教育や活動が私たちの仕事だと思っています。

 

 

 

 

 

■松本先生一押し!今日からできる楽しいプチエコ■

自分の生活をSDGsのアイコンと関連づけてみましょう。仕事、家事、料理、掃除、買い物、趣味などの活動がどの項目と繋がっているのか、考える中で暮らしかたの見直しができます。お子さんとクイズ感覚で話し合ってみるのもいいですね。

 

 

*松本先生とお話した感想*

 取材した後に見慣れた自然を目にして、「途方もない時間の積み重ねでできたんだ…、大地のチカラってすごい!」としみじみ思いました。
身近な自然への興味が、学びや持続可能な社会発展にもつながることにも感動。好奇心を忘れず、ワクワクしながら暮らしや社会を豊かにしていきたいですね。
そして、世界が取り組むSDGsと島根の縁…ぐっと身近に感じました。

 

 

 

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