みんなで乾杯!クラフトビールで地域の魅力を掘り起こす 石見麦酒 山口さん

2021.03.01

 

 


地域のものや少し変わった原料を使い、次々と美味しいビールを生み出す「石見麦酒」の山口厳雄(いつお)さん。
 

地域の生産者さんとの関わりや独自の製造方法で造るビールを通して、どの様な地域の未来を描いているのかお話を伺いしました。

 

 

―いろんな瓶がありますね!これ見たことあります!

 

これ全部「クラフトビール」です。
住んでる地域のものを原料にして造ったものもあると思いますよ!
 

ビールは自由で、主原料は麦芽とホップと水ですが、他に飲み口や香りなどの特徴とか、地域性を出すのに副原料を使います。
 

石見麦酒が使うのは主に「地域の素材」。
 

例えば、契約農園で作った作物の他にも、生産者さんがちょっと作り過ぎたり規格外で卸せなかったもの、家の庭に勝手にできたものなど、これまで使い道が無くて無駄になっていたものを持って来られたり、特産品をビールに生かせないかと全国から依頼があります。
 

2014年から始めてこれまで500種類くらいは造ったと思います。

 

 

―これ、ゆずの絞りかすですか?



そうです。

副原料に使う果物の皮を剥いたり、傷んだ部分を除けたり、絞るとかすが出ます。
 

だいたい「跡市(あといち)ひつじ牧場」さんへ羊の餌として卸していますが、多い時にはFacebookなどで引き取り手を探すこともあります。
ジャムにしたら絶対美味しいものとかあるんですよね。
 

地域の生産者同士で連携していて、羊が元気に育ったら、今度はビールでジンギスカンを食べるイベントを開催してお肉を買い取ります。
 

でも、ゆずは種からお肌がぷるぷるになる化粧水が作れるそうで…最近は人間の略奪が始まってます。(笑)


昨日も福岡から木酢(きず)っていう柑橘類が送られて来ましたし、熊本・阿蘇の柚子とか、毎日何かが送られてきますよ。
他は、これまでに苺、夏蜜柑、はっさく、ブルーベリー、イチジク、西条柿など。
 

ちょっと変わったものなら山椒やお茶、芋にこの間はシジミを使えないかと相談がありました。
海外には牡蠣を使ったものもあるので、いけるんじゃないかと思ってトライしてみたら、美味しいビールが出来ました!
 

ビールは世界中で作られていますから、アレンジのヒントもたくさんあるんです。
 

小ロットで造れるし、使った副原料の宣伝にもなる。
提供してくれた人も「うちのビールだ!」って言ってくれるでしょ。

 


―クラフトビールは、一次産業との相性がとてもいいんですね。

改めて、マイクロブルワリーとはどの様なものか教えていただけますか?



小規模なビール醸造所のことです。
 

1994年以降、ビール製造免許に必要だった年間最低製造量が大幅に引き下げられたことによって、日本でもマイクロブルワリーが設立できるようになりました。
 

石見麦酒では、年間にだいたい20,000リットルくらいのビールを造っています。
 

これからマイクロブルワリーを作りたい人たちの受け入れ指導もしていて、これまで石見麦酒で修行した人たちで約45軒のマイクロブルワリーを設立しました。
 

いま、全国各地にだいたい450軒程度あると言われているので、全体の10%くらいです。

 


―石見麦酒を設立された経緯を聞かせていただいてもいいですか?



元々、微生物学や菌類のことが好きで大学の農学部で学びました。
 

商売にも興味があって学生ベンチャーの走りみたいな感じだったと思いますが、学生の時に椎茸の栽培キットを作って売ってました。
今みたいにホームセンターに栽培キットなんか売っていなかったんで、「こんなのあったら面白いな。これはうけるな」と思って色々開発して結構売れたんですよ。
 

卒業してから、本当は日本酒の杜氏(とうじ)になりたかったんですが、就職氷河期でなかなか難しく味噌メーカーに就職しました。味噌も凄い面白かったですよね。
 

その後は、家業の木工業を手伝うために戻りました。
大手の家具メーカーやホームセンターなどとの競争が激しい業界で、ビール醸造なら小規模で出来るし、自分の知識も生かせる。
製造・販売だけじゃなく木製の設備開発、工場の内装工事は家業で行う。
 

マイクロブルワリーのシステムそのものを開発・供給し、地元密着のマイクロブルワリーを広めたいという構想を温めてました。

 

 

―それでビジネスコンテストに出られたんですね!



当時、江津には稼働している酒蔵が無くて、祝い事は大田や浜田の酒を買っていたんですよね。
そこで、世の中でやってない新しい方法で作ったクラフトビールを地酒として造ろうと。
 

興味を持った人を全国から受け入れて、石見をクラフトビール最先端の地にしたい。
酒造が増えれば地域の素材を沢山使ったイベントも…と提案し、大賞をいただいたことをきっかけに設立に向けて動き出しました。
 

始め、都会での事業展開も考えていたんですが、この事業の構想に対して否定的な意見も結構あるんですよ(笑)。
新しいことを始める時は必ず反対派の評論家が出るし、実績が無い事への警戒の声ありました。
 

そんな中、江津市には、ご縁があって知り合いも多かったし、設立にあたっては、銀行のビジコン参加や県の6次産業化補助金の申請や法人の登記などについても行政や支援機関の方から手厚く支援をいただき、市長は地酒を応援して「乾杯条例を作る」とかって…もう地域の力を借りまくってますよね。(笑)
 

結果的に江津で良かったと感じていますし、クラフトビールを通じて恩返しをしていきたいと思っています。
 

「田舎でするビール造り」として地域に密着することもその時に決めました。

 

 

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