縄文時代の巨木林・三瓶小豆原埋没林

縄文時代の巨木林・三瓶小豆原埋没林

三瓶小豆原埋没林は、三瓶山の北麓、大田市三瓶町多根小豆原(あずきはら)地区にあります。 火山噴火によって埋もれた4000年前の森で、当時のままの姿で地中に林立しています。
太古の森の姿をそのまま残す埋没林として世界的にも貴重で、国の天然記念物に指定されています。

当館では、発掘した巨大な幹と根株、小枝が残る幹の3本を展示しています。また、現地は三瓶小豆原埋没林公園として地下の展示施設があります。

埋没林の形成

発掘時の様子。立木の周囲に土石流に押し倒された流木が折り重なる。

巨木の森は何百年もの時をかけて育ち、三瓶火山の噴火で地中に埋もれました。
埋没の直接的な原因は「土石流」でした。火山活動に伴い、三瓶山の北麓で斜面崩壊(山体崩壊)が発生しました。その土砂が大規模な土石流となり、谷を流下しました。
土石流は強烈な破壊力を持ち、直撃ルートの森は根こそぎ倒されたと思われますが、小豆原の谷はルートを外れていました。土石流が流れたのは隣の谷だったのです。
ふたつの谷は埋没林公園の下流約500mで合流しており、土石流は合流点から逆流して小豆原の谷へ入り込みました。
埋没林の付近まで達した土砂は勢いが衰えており、木々は倒されずに埋もれたのです。

埋没林を埋めた地層

三瓶小豆原埋没林を埋めている地層は、上から順に「火山灰が水で運ばれて静かに堆積した層」、「火砕流の層」、「土石流の層」にわかれます。
まず、土石流が、続いて火砕流が流れ込みました。火砕流は350度程度の温度だったと見積もられていますが、樹皮の表面を焦がしただけで材の深部は炭化していません。
火砕流の地層の中には、水などが沸騰して抜けたとみられる構造(二次噴気孔)が多数認められることから、火砕流の堆積直後に水が流れ込み、温度が一気に低下したとみられます。

「火山灰が水に運ばれて静かに堆積した層」の形成は、この埋没林が長い幹を残していることと関係します。
土石流の本体が小豆原の隣の谷を流れ、小豆原の谷は合流部をせき止められる形になりました。つまり、天然のダムです。
ダムに流れ込んだ水は火山灰を運び、木々を深く埋めていきました。もしダム状態になっていなかったら、木々は根元付近が埋もれただけで幹までは残らなかったことでしょう。

埋没林の樹種

三瓶小豆原埋没林では、立木、倒木ともにスギが過半数をしめ、特に直径1mを超える大径木はほとんどがスギでした。スギ以外ではトチノキ、ケヤキ、カシのなかまなどがありました。

埋没林の樹種構成から、縄文時代の三瓶山北麓の谷筋には純林に近いスギ林が広がり、その間にトチノキなどの広葉樹がわずかに生えていたことがわかります。

なお、現在、中国地方では小豆原付近の高さ(標高200m)にはスギの自生林は残っていません